建築用金物や建材【プロの大工が解説】特徴まとめ
大工が使用する建材や金物にはたくさんの種類があり、それぞれの特徴や相性の違いを理解して現場に合った建材や金物を使い分ける必要があります。
取り付け方法や加工方法の違いだけではなく、性能面で規定されている場合もあるため、大工が工事を行う上で最低限必要な知識になります。
目次
建築用金物について
・大工が使用する釘について
・大工が使用するビス(木ネジ)について
・内装用化粧金物
・構造用金物について
・建築用ボンドについて
・建築に使用するテープについて
大工が扱う建材の紹介
・化粧材について
・構造用木材や下地用木材
・石膏ボードについて
・ベニヤなどの面材について
・断熱材について
・サッシについて
・マンション用の特殊建材
建築用面材を使用するコツ
・ベニヤの特徴の活かし方
・面材の勾配カットの方法
・面材の特徴を活かした工法
・内装用集成材の使用法
建材を使用する上での注意点
・プレカット材の特徴
・法令や税金に関係する建材の扱い
・商品の扱い
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記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
建築用金物について
建材と建材の固定に使用する物を金物と呼びます。
昔は釘やカスガイなどを金物と呼んでいましたが、気密や断熱効果を求められる現在の建築ではボンドやテープなども金物として扱われます。
・大工が使用する釘について
大工が扱う金物の代名詞ともいえる釘。
以前は金槌で打ち込んでいましたが現在はほとんど釘打ち機で固定を行います。
釘は引き抜きに対して摩擦力だけで抵抗する仕組みなので、引き抜き方向の応力は大きくありません。
釘は横方向にかかる力(せんだん力)に対して強い特徴があるため、横方向に対しての固定に使用します。
大工工事では引き抜きを固定できるボンドと併用する場面が多くなります。
・大工が使用するビス(木ネジ)について
釘と並んで大工が木材固定に多用するビス。
インパクトドライバーでネジ込むことで固定します。
釘と違い引き抜きに強く、抜くことも容易な金物です。
複雑な収まりや、ボンドを使用できない場合など釘打ちとの使い分けを行います。
また、大工工事では金属やコンクリートなどへの固定でもビスを使用する場合があります。
・内装用化粧金物
建具で使用する丁番やラッチなども大工が調整や交換を行う場合があります。
新築でのカーテンレールや壁掛けテレビ用の固定台などの下地も大工仕事なので、様々な金物について把握する必要があります。
・構造用金物について
木造建築物の構造部は現在でも仕口や継ぎ手を使用して組み上げています。
木造住宅などの建築物で構造耐力が必要な場合、構造補強に使用されるのが構造金物です。
構造金物はボルトを通しナットで締め付けるタイプやカスガイのように打ち込みによって固定するタイプ、ビスでプレートを固定するタイプなど様々です。
軸組み工法以外でもピン工法やSE工法などドリフトピンを使用する場合もあります。
・建築用ボンドについて
現在の木造建築ではボンドの使用は欠かせません。
建築で使用するボンドには様々なタイプがあり特徴が全く違います。
新築やリフォームでは主に木工用ボンドやウレタン系ボンド、速乾ボンドを使い分けます。
他にもシリコン系や編成シリコン、瞬間接着剤なども使用する場合があります。
住宅に使用できるボンドはシックハウス対策として、ホルムアルデヒドの発生量に規定があります。
大工が使用するボンドの特徴や使い分けについてのページはこちら
・建築に使用するテープについて
大工工事ではテープを使用する場合もあります。
外壁(サッシなど)の工事では防水テープを併用することがあります。
屋根補修用なども含めると防水テープにも様々な種類があります。
気密工事では隙間部分の目張りに気密テープを使用します。
養生では粘着力が調整された養生用テープを使用します。
大工が扱う建材の紹介
大工はお客さんの要望に合わせて様々な建材を使用します。
木材以外でも頻繁に使用する建材については専門的に扱い方をマスターする必要があります。
・化粧材について
大工が使用する化粧材は主に無垢材と新建材に分けられます。
無垢材は日本建築の文化で、和室に杉材や桧材を白木で仕上げて使用します。
取り付けには手作業での加工が必要になる共に歴史のある文化なので木柄や向き、方向などに厳しい決まりがあります。
新建材は表面を化粧シートで仕上げた化粧用建材で、現在の建築で枠材として広く使用されています。
取り付け効率が高く、新築のように下地に狂いが少ない状態では容易に取り付けが行えますが、正しく取り付けができていないと目立ちやすいなど扱いに癖があります。
化粧材(無垢材と新建材の違い)についてまとめたページはこちら
・構造用木材や下地用木材
木造建築物は名前の通り主に木材を使用して建築を行います。
木材は曲がりやネジレ、割れが起き、加工精度や乾燥によってサイズに狂いが発生するものです。
和室では化粧材である柱が構造材を兼用しています。
洋室でも構造材である柱や筋交いが下地を兼用します。
狂いが発生する木材を目的の形状に納めるためには、木材の特徴に対する知識と思い通り加工できる技術が必要です。
・石膏ボードについて
石膏ボード(プラスターボード)は建築で広く使用される内装用壁材で、防火の性能(準防火性能)があります。
石膏ボードは石膏を紙でサンドイッチ下構造の面材で、狂いが少なくクロスやペンキ、塗り壁の下地にも最適です。
木造の大工にとっても石膏ボードの扱いは木材と同等に専門的な技術が必要となります。
・ベニヤなどの面材について
建築ではベニヤ(合板)や集成面材などの木質面材も多用します。
木質なので木材のメリットである加工の容易さや軽さなどがあり、木材のデメリットである狂いやすさを補うように作られた建材です。
大工が扱う建築用面材の中にはリサイクル材(パーティクルボード)などの特異な特徴の面材もあり、用途に応じて使い分ける必要があります。
・断熱材について
断熱材は建築物の断熱効果を高めるために使用します。
近年では住宅でもエコロジー化が求められ、断熱性能の向上を進めるメーカーも増えています。
断熱材を使用する部分は天井や壁、床など構造が異なるため、構造に合った素材を使用します。
建築物は水に弱いため、断熱計画において冬季の結露対策が欠かせません。
・サッシについて
サッシは外壁の開口部に使用する建材で、一般的に組み立てをサッシ業者が行って搬入し、取り付けを大工が行います。
サッシには化粧性や断熱気密性能、防火性能、防犯性能が求められるため様々な素材を使用した商品があります。
商品代も高いため、取り付けを行う大工はサッシの性能を把握して施工する責任があります。
・マンション用の特殊建材
マンションは戸建てと違い、コンクリート床を挟んだ下の階に別の方が生活を行っています。
そのためマンションに使用する床材には遮音性能が必要とされ、その中の一つにコンクリートに直接施工できる直貼りフローリングがあります。
直貼りフローリングは木造大工が使用する木質フローリングと見た目こそ似ているものの、扱い方が全く違うため専用の施工知識が必要です。
建築用面材を使用するコツ
建築用面材は近年のボンド性能の向上によって強度を信用して利用できるようになっています。
リフォームなどイレギュラーな工事では、面材の特殊な性能を活かすことで画期的に早く綺麗な仕上げが可能になる場合があります。
・ベニヤの特徴の活かし方
ベニヤ(合板)は物入れ(押し入れ)などの壁に仕上げ材として使用する場合があります。
ベニヤの表面は無垢の木材なので下地や刻み、取り付けの精度が仕上がりでとても目立ちます。
ベニヤは薄いため逃げが少なく、加工は鉋などの木材加工の道具を使用するなど石膏ボードと扱いが異なります。
しかしベニヤは粘りが強く表面が硬いため、突き付け時に曲がりや利かしを利用するなど、石膏ボードでは不可能な方法が可能です。
ベニヤ張りで必要な鉋(かんな)の使い方についてのページはこちら
・面材の勾配カットの方法
木造建築物外壁の屋根にかかる三角部分を「矢切り」と言います。
新築工事では矢切部分に面材(構造用合板や石膏ボード)を張る作業を行います。
また、隅木屋根の屋根板(野地板)を張る作業でも材料を勾配で加工する必要があります。
現在ではプレカットが主流となりこのような勾配カットを行う機会が減りましたが、リフォームなど手加工が必要になる場合もあります。
定規を使う方法や現場でカットするなど様々な方法が考えられますが、計算などを上手く使い簡単にカットする方法があります。
・面材の特徴を活かした工法
一般的な木下地は既存の躯体に固定しながら形を作ります。
リフォームなど水平や垂直などの基準が掴みづらい場合や躯体に固定しにくい状況などでは、面材の強度を利用して仕上がり側から作る方法があります。
ユニットバスを想像していただければわかるように、箱状のユニットは単体で強度を出すことができ、固定しにくい躯体部分でも強度を保ちながら固定することができます。
リフォームで使えるユニット式下地の方法についてまとめたページはこちら
面材のカットで使用する丸ノコの使い方についてまとめたページはこちら
・内装用集成材の使用法
内装工事ではフリーバンと呼ばれる内装用集成材の無塗装棚板が多く使用されます。
様々な樹種が選べ、厚みやサイズも特注できることもあり、物入れの棚板から無垢材の階段まで幅広く使用されています。
無垢材の集まりであるフリーバンは無垢材を加工できるスキルが必要ですが、比較的安価なフリーバンは、無垢材ではできないこともできるため価格を抑えたリフォームでは重宝します。
フリーバン(集成棚板)の使い方のコツについてまとめたページはこちら
建材を使用する上での注意点
建材を使用する建築は様々な状況に関わります。
同じ建材を使用する場合でも状況によって求められることが異なることもあります。
・プレカット材の特徴
刻み加工を工場で行うことをプレカットと言います。
最も普及しているのは軸組み(構造材)ですが、近年では屋根材や筋交いなどの羽柄材、階段や断熱材などもプレカット加工です。
プレカットにはコストの低下や工期の短縮などのメリットも多い反面、デメリットもあります。
プレカット材は手刻みの墨付けとは原理が違い、材料の加工精度によって仕上がりの精度が左右されます。
もちろん簡単に修正が可能ですが、修正の基準については本来の墨付け原理を理解する必要があります。
・法令や税金に関係する建材の扱い
石膏ボードや断熱材、サッシなどは大工が新築工事で当たり前に扱う建材です。
このような建材にはたくさんの性能を持った商品があり、設計段階で性能の利用を計画している場合があります。
計画の中には建築基準法や都市計画法などの法令に関わる場合や、税金や保険に関わる場合もあります。
大工はこのような計画に沿った取り付けを行う責任があり、一定の建築知識が不可欠になります。
性能を利用する建材(石膏ボードや断熱材)の扱い方をまとめたページはこちら
・商品の扱い
大工が扱う建材の中にはお客さんがこだわって選んだ商品も多く、当然慎重な扱いを求められます。
住宅は家族にとって夢のマイホームです。
35年間ローンを払うお客さんの気持ちを理解して、石膏ボードであっても丁寧に扱う必要があります。
最後に
いかがでしたでしょうか?
建材は間違った使い方をすると大きなトラブルにつながる危険性があります。
言い換えると建材の知識を持つことは、無知な大工と大きな差を生む武器になります。
情報を収集して実際に試すという地道な修得になりますが、画期的な技ほど建材や道具などの基本的な知識や技の積み重ねで生まれます。
まずはいつも使っている建材から調べてみてください。