建築に使用される木材【プロ用】特徴や性質

大工が木材について解説

構造材や下地材に使用される木材の特徴や性質についてと、木材と建築の関係についてご紹介します。

目次

説明用動画

なぜ木造建築物が多いのか?
・建築の方式
・木造建築のメリット
・木造建築のデメリット

木材の樹種別での特徴
・無垢材
・集成材など

乾燥方式について
・機械乾燥(KD)
・自然乾燥

SPF材(KD材)の使い方のポイント
・筋交いの使い方
・間柱の使い方
・垂木やスンサンの使い方

木材の使用上の注意点
・芯持ち材について
・杉材の注意点
・桧材の注意点
・LVL材の注意点
・SPF材の注意点

海外材と国内材について
・海外材の伐採について
・国内材の余り

最後に

説明用動画

このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。

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なぜ木造建築物が多いのか?

木造建築物の特徴

木材のご紹介の前に木造建築物の特徴を軽くご紹介します。

・建築の方式

現在多く採用されている建築の方式は3つです。
・木造
・鉄骨造(R造)
・鉄筋コンクリート造(RC造)

3つの中で現在最も多く採用されているのが木造です。

・木造建築のメリット

値段が安い

R造やRC造と比べて木造は最もリーズナブルな建築方式です。

扱いやすい

木造は建てやすく解体しやすい建築方式です。
加えて構造補強も行いやすいので、リフォームも行いやすい特徴があります。

十分な強度

木造建築物は3階建てまでしか建てることができませんが、金物と組み合わせることでかなりの強度が出せます。

・木造建築のデメリット

燃える素材

鉄骨造も火事には弱い特徴がありますが、木造は素材に炎症性があります。
建築の際には防火基準に適合させる必要があります。

シロアリや腐食の影響

木造は水で腐食し、腐食箇所にはシロアリが発生します。
木造以外の建築でも水分は悪い影響を与えますが、特に木造での腐食はシロアリの影響で急速に痛みが進行します。

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木材の樹種別での特徴

現在の建築に主に使用される樹種

・無垢材

杉材

杉材は和室の化粧材としても使用される国産の樹種で、癖のも少なく扱いやすい材料です。
他の樹種と比べて特に柔らかい材料なので、強度は大きさ(太さ)で調整する必要があります。

桧材

ヒノキ材も和室の化粧材として使用される国産の樹種で、水に強く腐りにくいので屋外でも使用されます。
粘りがあって強度も高いのですが、節部分の癖が強く、木割れも起きやすい特徴があります。

SPF材(スプルース材)

SPF材は内装下地にちょうどいい強度で癖の少ない海外材でホワイトウッドとも呼ばれます。
SPFとはスプルス・パイン(松)・ファー(もみの木)の略称で現在はスプルース材のことを指します。

原木がかなり大きいので、年輪が細かい節の少ない材料が多く安価に手に入るので、現在の日本の建築では最も使用されている木材です。

化粧材としての価値はなく化粧材として使用することは滅多にありません。
構造材には集成材(EW)に加工されて多く使用されています。

赤松(米松)

赤松は米松とも呼ばれる安価で硬い海外の樹種で、強度が必要な根太や構造材などに使われます。

木目のある無垢材ではあるものの、マツヤニが出ることもあり化粧材としては滅多に使用しません。

松は全般的に水に弱い樹種ですが、完全に水没させる場合には腐らないという特徴があります。

・集成材など

EW材(構造用集成材)

EW材は30㎜程の厚みの板材を重ねるように接着した積層材で、構造材として広く使用されています。
芯持ち材(プレーンな木材)は木材の性質上確実に割れが起きますが、EW材は割れが起きないように作られているため形状が大きく変わらない特徴があります。

材料は主にスプルース材が使用されていますが、特に強度が必要な部分である通し柱などは赤松を使用したEWが使用されることがあります。

EW材はもともと14m程の長さで製作される材料なので、輸送さえ可能であれば長い材料を使用して継ぎ手を減らすこともできます。

※長尺の材料を扱えるプレカット工場は滅多にありません

LVL材

LVL材は合板のように薄い板を接着して作られた木材で、大きく分けて2つの種類があります。

・針葉樹のLVL

針葉樹のLVLは構造用合板のような下地材で一時期は構造材もあったようです。
比較的硬く扱いにくい部分はありますが、曲がりや癖が少なく接着も安定しているため最も信用できる下地材料でしたが、東日本大震災後に構造用合板の供給が止まった時期から見なくなりました。

・ポプラのLVL

ポプラのLVLは薄い板(2㎜程)の合板のような白っぽい色の木材です。
最も安価な材料のうちの一つで、マンション用の下地材やスンサン(35㎜角)として近年広く採用されています。

※軽天材(軽鉄)

軽天材は木材ではありませんが、木造住宅でも天井下地に軽天材採用する住宅メーカーが増えています。
スタッドと呼ばれる間仕切り壁に使用する材料を使用します。
施工性が高く、狂いがないという特徴があります。

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乾燥方式について

木材の乾燥方法について

 

木材は一定以上乾燥していなければ使用できないと建築基準法でも規定されています。

・機械乾燥(KD)

現在流通しているほとんどの木材が機械乾燥材です。
高温の窯に入れて強制的に乾燥させています。

・自然乾燥

自然乾燥は自然に乾燥させる方法で大きなスペースと時間がかかります。
現在では建築期間が短くなり設計時点で発注しても乾燥が間に合いません。
自然乾燥材をストックしている材料屋さんが減っていることもあり、無垢材を多く使用する地域以外では自然乾燥材を手に入れるのは難しくなっています。

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SPF材(KD材)の使い方のポイント

木材の使い方のコツについて

現在下地材は建材屋さんから加工された既製サイズの下地材を購入するのが一般的です。
既製品とはいえ木材は一本一本癖が違う材料なので使い方のポイントをまとめました。

・筋交いの使い方

筋交い材(スプルースor赤松の90㎜or105㎜×45㎜×3000㎜)について

筋交い材は上下向きと反りを確認します。
シングル筋交いの反りは後から調整して直すことができますが、ダブルの筋交いは調整できないので反りの相性を確認します。
反り相性の確認は同じ反り向きに重ね合わせて確認します。
同じ反り量であれば張り向き同士を合わせれば反りを相殺できます。

※筋交いは構造耐力に関係する部材なので、大きな節や割れのある材料は使用しません。

・間柱の使い方

間柱材(105㎜×27㎜or45㎜×3000㎜)について

間柱は上下向きと反り(両方向)、幅を確認します。
特に内壁に使用する間柱はまっすぐで幅のいいものを選びます。
多少の曲がりは短くカットする部分に使用できます。

間柱材は精度が必要な部分以外でも使用するので、割れや反り返った材料はそちらに回します。

・垂木やスンサンの使い方

垂木材(赤松の45㎜×45㎜)とスンサン材(スプルースの35㎜×35㎜)について

垂木やスンサンなど同寸角は反りと共に木目の方向を確認します。
板目方向(柾目が表面にくる方向)の方が強度あり後々の曲がりが少ない特徴があり、芯材に近い部分では節によって曲がりやネジレが多く発生します。

スンサンのような小さい材料の厚みは比較的狂いが少ないのですが、ひきわり加工で作られている材料なので稀に加工が流れている(三角形になっている)場合もあります。

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木材の使用上の注意点

芯持ち材の特徴

・芯持ち材について

木材には芯持ち材は表面が割れる(広がる)特性があるため、化粧柱は意図的に裏側に鋸目を入れて広げ、化粧面に割れが出ないようにするための背割りという技法を行います。

背割り柱は真壁(和室の収まり)では背割りがベストな方法ですが、大壁(クロス壁収まり)には非常に不向きです。
背割りの有無に関係なく割れが起きる芯持ち材はクロス下地には向きません。

・杉材の注意点

杉材は癖も少なく下地としても使いやすいのですが、非常に柔らかい樹種なので大きさ(材太さ)や釘(ビス)の長さを調整してバランスをとる必要があります。

・桧材の注意点

ヒノキ材(節あり)は下地材としては不向きです。
杉と比べても節部分の癖や割れが強いため後々の暴れが予想されます。

・LVL材の注意点

ポプラのLVL材は加工精度が高く施工性も悪くないですが、1割ほどの割合で接着面がはがれていることがあります。
また釘打ち時に割れることも多く強度に不安があります。
石膏ボードを張る場合などは木工用ボンドとの併用固定がおススメです。

・SPF材の注意点

スプルース材は内装には適した木材ですが、屋外で使用すると非常に劣化しやすい材料です。
塗装をしていてもすぐに腐る材料ですので、安いからと言って屋外使用することは絶対におススメしません。

傷んだウッドデッキなどについたシロアリが主屋に影響を与えることもあります。

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海外材と国内材について

海外材の伐採と国内材の余り

・海外材の伐採について

SPF材は海外の材料です。
年輪や節の数から見ても大木を伐採していることが分かります。
温暖化への影響もさることながら、現在輸入されている木材にも限りがありいずれ無くなることは明白です。

30年ほど前の木造住宅には、海外材であるトガ材やラワン材が多く使用されていましたが現在は使用していません。
伐採によって数が減り、値段の高騰で構造材や下地材に気軽に使用できる材料ではなくなりました。

・国内材の余り

四国の林業見学に行ったことがありますが、国内材(杉)は山に大量に生えているそうです。
以前の需要により植林された杉が海外材の普及によって売れなくなり林業従事者が減り杉山が放置され、大きくなりすぎた杉材は切り出しが難しく問題となっています。

国内材が余っているのに海外材がなくなっていくのはとても皮肉なものです。

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最後に

木材を扱うプロとして特長を知ってうまく利用するとともに、木材を大事に使用してほしいと思います。

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