墨差し(すみさし)【竹製大工用墨付けペン】使い方や手作り方法を紹介
墨差しは日本で古くから使用されている墨付け道具で、木材に細い線を書き入れるのに最適です。
墨差しは、もともとすべての大工が手作りしていたもので、うまく使用すればかなり綺麗な墨を引くことができます。
今回は墨差しの基本的な使い方と使いやすい墨差しの作り方をまとめてみました。
市販のものもありますが、手作りしたほうが使いやすい場合もあるので、ぜひチャレンジしてみてください。
目次
墨差しの特徴について
・大工の墨付け道具
・木材への墨付けには最適
墨差しの扱い方
・水を含ませて使用する
・墨を拭き取る
墨差しの使い方と形
・基本の使用法
・墨差し各部の使用法
竹の特徴について
・竹の種類について
・竹を割る方向について
・竹の上下の確認方法
墨差しの作り方
1・水を染み込ませる
2・形を整える
3・切込みを入れる
4・深く割り進める
5・先を仕上げる
6・ペン先を作る
7・使用して調整
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記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
説明用動画
このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。
墨差しの特徴について
墨差しは、墨をつけるための専用の道具です。
・大工の墨付け道具
墨差しは、さしがねや墨壺とセットで使用する道具で、墨付けスキルの修得には、3つセットで修得する必要があります。
・木材への墨付けには最適
木材に、濃く細い線が引ける道具です。
多少湿った木材にも墨をつけることが可能で、近年使用されるPG材(防腐剤注入材)などの湿った材料でも、墨差しであればきれいに書くことが可能です。
墨差しの扱い方
・水を含ませて使用する
竹の墨差しは、水を含ませた状態で使用します。
乾燥していると、割れやすく墨も乾きやすくなります。
・墨を拭き取る
鉛筆と違い、手や指矩(さしがね)などに墨が付くので、雑巾などで拭き取りながら使用します。
墨差しの使い方と形
・基本の使用法
墨差しの方向について
墨差しの先は竹の表面(皮面)に向けてとがっている形状で、表面が外側(右手であれば右側)に向く方向で使用します。
※利き手側に引く場合には墨差しが斜めになる状態で使用します。
基本の墨の引き方(正使い)
利き手側に使用する場合には、裏側の斜めに削られた面を材の芯方向に合わせて使用します。
裏側の切り角度に合わせて引くことで若干の木材の凸凹面にも正確な墨が引けます。
さしがねと木材が離れている場合(逆さ使い)
丸い材料などへの墨付けなど、さしがねが材から浮いてしまう状態では、墨差しを逆さに使用します。
その場合には、墨差しの表面(皮面)を正確に芯方向(または水方向)に調整することで、さしがねの浮きによるズレが起きないようにします。
印のつけ方(寸法の測り付け)
さしがねで寸法を材に測り付ける場合には、墨差しの先(斜めになっている部分)の短い方(手前側)を使用して印をつけます。
このため、墨差し先の斜めの角度は鈍角(直角に近い)の方が使いやすいです。
※市販のものはかなり鋭角になっているものがある。
・墨差し各部の使用法
側面を使用する
墨差しの端(幅方向)は直線状になっていて、定規として使用します。
材料に面(皮面)がある場合などに、墨差しの端を使用してさしがねの始点(材角)を見つけます。
ペン先部分について
墨差しの尻側の先は、マジックのような線を描くためのペン先で、「いの一番」などの文字や、指示線などを書き入れるために使用します。
墨差しの先は硬いので、「は」や「ほ」、「ぬ」など、クルッとした円状の線を書くことができません。
※建前時に字が読めないと組めないので、綺麗な字を書くための練習をしてみてください。
竹の特徴について
竹は、安価で硬く、割りやすいなどの特徴から、世界中で様々なものに加工され利用されています。
墨差しを作る上での竹の特徴をまとめました。
・竹の種類について
墨差しには、真竹という種類の竹を使用します。
肉厚でタケノコ用に栽培されている孟宗竹は墨差しづくりには向いていません。
・竹を割る方向について
竹には割りやすい方向があります。
竹は上(生えている状態での上)から割ります。
・竹の上下の確認方法
竹の上下の確認は節を見て判断できます。
節は片方に尖った形状になっていて、尖った方が上です。
節を切り落とす場合には、上下を確認できるように印をつけます。
墨差しの場合は上から加工するので、元側(生えている根本側)に面(印)を取っておくのがおススメです。
墨差しの作り方
もともと墨差しは、それぞれの大工が、使用法に適した形で手作りしていました。
市販のものと比べ、自分の使いやすい形に作るメリットがあります。
1・水を染み込ませる
竹は、墨差しを作る際にも水につけて柔らかくします。
出来れば何日か水につけ、沈むぐらい水を吸わせてから作りましょう。
2・形を整える
鉋を使用して好みの大きさに削り出します。
先部分の大きさは大きければ墨持ちが良く、小さいほど扱いやすくなります。
側面は定規になるので直線にし、先部はしっかりとした長方形になるようにします。
竹は表面(皮面)が最も固いので厚みを削る場合には出来るだけ表面(皮面)に近い部分を使用します。
※僕は小さいのが好きなので幅12mm厚み3mmほどにしますが、ここまで小さくなくていいと思います。
3・切込みを入れる
墨差しは墨持ちが良くなるようにできるだけ細かく割ります。
細かいピッチで割るコツ
先が90°(直角)状態では割りにくいので、割る際に30°程度の斜め状に加工します。
30°に加工した状態で1.5㎜程のピッチで割ると仕上りが0.5㎜~0.7㎜程に仕上がります。
※薄く割り過ぎると、中で砕けて使えなくなりますので加減します。
手を切らない切り込み方
墨差しの切り込みは、手に向かって刃物を扱うので、間違った方法で行うと危険です。
鑿(のみ)の刃先を右手の掌で包み込み、左手で竹先を構え、左手の親指と人差し指で右手との距離を保ちながら右手の手首を返す動作だけで切り込みます。
上記の厚みで5㎜程切り込んでから、軽く鑿をこねて1cmほどの深さに割ります。
4・深く割り進める
割るための道具を作る
墨差しを作る竹の余りで、幅15mm厚み3㎜程の刃物状に加工し、割り進めるための道具を作ります
割り口に差し込んでひねって割ります。
※割り進める際に刃物(カッターナイフなど)を使用して割り面が削れると、広がりの原因になるので、竹の割具を使用することをおススメします。
後々割りやすくするコツ
細かく割った全ての割り込みを4~5センチほどの深さに割り進めます。
割り広げる前に、7cmほどの深い割り込みを3等分(5㎜幅ほど)で割り入れておくと後々で指で割りやすくなります。
開き止めのコツ
墨差しの先の長い方の一本(一枚)は、少し太く(1㎜~1.2㎜)残しておくと、先が開きにくくなります。
5・先を仕上げる
表面が先になるように方向を確認して、先を斜めに切り落として仕上げます。
角度は、幅方向の15°~25°程で、厚み方向は35°~40°程が使いやすいと思います。
先が直線状になるよう、平面状に切り落とします。
6・ペン先を作る
ペン先は、使いやすい太さに削り落として円柱状にします。
先を木材などの上に当て、金槌で叩いて割ります。
割れたら先を鑿で丸く削り、更に叩いて形を調整します。
7・使用して調整
墨差しも、使用していると先が減ってきますので、鑿で切り直します。
使いながら調整して、使いやすい形に仕上げてください。
割りが浅くなってきたら、端部から指で揉むように押して少しずつ割り直します。
最後に
墨差しは、大工道具の中では珍しい竹製の道具です。
僕も昔、師匠に教えてもらって初めて墨差しを作ったときは、楽しかったことを覚えています。
皆さんも是非作って、使ってみてください。