鑿(ノミ)の使い方【初心者向け】プロの大工が詳しく解説

鑿の打ち方

木で物を作る時に、とても便利な道具である鑿(のみ)。
鑿の存在は知っているけど、難しそうと使用をためらっていませんか?
確かに鑿は、プロの大工でも使いこなせない人が多くいるほど、奥が深い道具です。
そんな鑿でも、実は使うこと自体が難しいわけではありません。

今回は初めて鑿を購入する方へ、使い方や手入れなど、基本の重要なところだけをまとめてみました。
木の加工において圧倒的に効率的な道具なので、DIYや工作でも絶対に活躍しますので是非使ってみてください。

The English version of the article [Using a Chisel – Comprehensive Guidance from Japanese Woodworkers for DIY] is available here.

目次

鑿(鑿)画像

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説明用動画

大工鑿とは

鑿が必要な4つの理由
1・平面や角を作る
2・素早い加工が可能
3・手入れが容易
4・奥まで加工できる

鑿の使い方と注意点
・基本の使い方
・鑿の扱い方と注意点

基本の形(研ぎ方)
・切れ味
・鑿の刃の形

基本の鑿の選び方
・初めて鑿を購入する場合
・おススメできない鑿
・セットで必要なもの

購入時の仕込み

最後に

大工道具(手道具)についてのまとめページはこちら
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記事の作成者

深田健太朗深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。

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説明用動画

5.鑿(ノミ)の使い方【初心者用!】プロの大工が基本について解説

このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。

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大工鑿とは

大工鑿

鑿にはおおきく分けて二つの種類があり、大工鑿と彫刻鑿(宮大工が彫刻を行う為に使用する。)があります。
大工が使う鑿は大工鑿という種類で、木材に仕口や継ぎ手など、平たい面や角を加工する道具です。
加工作業に応じて様々な幅や、大きさのタイプがあります。
大工鑿は木材加工(叩くことや切ること)にとても適した形になっています。
掘る穴の径に合わせて使用する平行な刃幅。
研ぎやすいように、鋼と地金の合わせ刃になっており、片刃の裏面が、平面加工に必要な定規を兼ねる形になっています。
また、叩くことが出来る柄と刃が直線的配置され、打撃の衝撃が効率よく刃に伝わる形になっています。

大工技能士についてまとめたページはこちら

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鑿が必要な4つの理由

鑿の特徴

1・平面や角を作る

鑿には平面加工を行う為に定規部分(刃裏)があり、角度を設定して打ち込むと、自動的に平面加工ができます
また、刃の角で切り込むことにより、平面を作ると同時に角を加工出来ます
使いこなすことが出来れば、かなり高い精度の加工も容易に行うことが可能です。

近年は便利な加工用機械もたくさんあります。
加工機械は使用制限が多く、木材加工において鑿の出番はなくなりません。

2・素早い加工が可能

鑿は木材という硬い材料を加工するため、玄翁で叩いて使用します。
仕上げで、押して(突いて)使用する場合にも、ナイフと比べ力が入りやすい形です。

木材の加工では、木の性質を活かして木目に沿っての割りこみや、繊維に直行して強く打ち込むなど、道具に大きな負荷がかかります。
鑿は加工精度と共に、木材加工に必要な丈夫さも兼ね備えています

木材加工を行う上でとても効率的な道具である鑿は、扱いが熟練するにつれ、素早い加工が可能になります。

3・手入れが容易

鑿は研いで使用するので、少しずつ刃が短くなります。

日本刃物である鑿は、他の日本刃物と同様に、研いで使用することを前提に作られています
硬い鋼と、やわらかい地金を組み合わせることで、砥石との相性が高まり、減らしやすく、研ぎ上げやすくなります。

鑿を研ぐ目的は、刃の切れ味を良くするだけではありません。
木材加工を行うために最適な形を保つよう、常に調整する必要があります。
鑿は容易に形を調整することが出来る刃物です。
研ぎをマスターすることで、より正確で速い木材加工が可能になります。

4・奥まで加工できる

ほぞ穴と呼ばれる柱穴の加工にも鑿を使用します。
穴の大きさは3cm×9cm、深さは6cm~9cm程
鑿は、ほぞ穴のような深い穴でも、正確に素早く掘ることが出来ます

梁や桁などの太い木材に、仕口や継ぎ手を加工する場合には、奥まで届くような長い鑿を使用します。

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鑿の使い方と注意点

鑿の基本の使い方

・基本の使い方

・大工鑿を使用する方向

大工鑿は、材料側に裏(鋼側)を当てます。
彫刻鑿は、材料側に表を当てます。

そもそも大工は、平面を作る仕事です。(日本の住宅は平面で作られています。)
裏側は、平面を作る定規になるので、裏側で角度を定めて打ち込みます

鉛筆削りでも、平面の作り安さを感じることが出来ます。
刃の表や、カッターナイフで削ると食い込みやエグレが起きますが、鑿で削るとあっさりまっすぐ削れます。
試してみてください。

・叩いて使用する

当たり前のようですが、叩いた方が早く加工できます
利き手で金槌を扱うので、鑿は利き手ではない方の手で使うことになりますので、最初は慣れないかもしれません。
鑿を持つ手に木を取られると、金槌で鑿を持っている手を叩いてしまうこともあるかもしれません。
少しずつ慣れていってください。

金槌(玄能)についてまとめたページはこちら

・2段階で加工する(コツ)

鑿での加工のコツはたくさんあるのですが、今回は基本編なので厳選して一つご紹介します。
鑿で加工する場合には、まず墨をつけます。
コツは、墨から3mmほど避けて荒堀してください。
必要な深さまで彫れてから、墨通りに仕上げてください。
2段階で加工する。
これだけで穴の仕上がりがだいぶ変わります。

・木の性質を知る

鑿を使いこなすには、木の性質を知ることが必要です。
木にはそれぞれ硬さや、粘りなど特徴があり、縦目や横目、節は硬く、節の付近は木目が複雑に巻いてます。
速さも正確性も、木の知識で大きく差が出ます
木の観察をすることが鑿を使いこなす近道です。

鑿の本格的な使い方について詳しくまとめたページはこちら

・鑿の扱い方と注意点

・ケガに注意

鑿はとても切れ味の良い刃物です。
鑿は、カッターナイフなどと違い、自分で研ぎますので、あまり変なケガはしにくい道具です。
しかし、鑿は想像以上に切れますので、大ケガにつながる可能性があります

・濡らさない

鑿は錆びる鉄と、水に弱い木で出来ています。
もちろん研ぐときには水を使いますが、研ぎ終えたら油を塗って錆び対策をしましょう。
また、柄は叩くので濡らすと特に早く痛みますので、極力濡らさないようにしましょう。

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基本の形(研ぎ方)

鑿の裏の形

・切れ味

もちろん大工をする上で鑿に切れ味は必要です。
鑿研ぎは、包丁研ぎと比べると、刃幅が小さく基本さえ分かれば、初心者でも簡単な方だと思いますので。ぜひチャレンジしてみてください。
基本は砥石に水をしっかり吸わせます。
研ぎながら研垢をたっぷり出します。(基本は砥石全体で研ぎますが、刃が小さいので部分的に研いでもいいと思います。)
研垢を練るような感覚で研ぎあげてください。
最初からうまくはいきませんが、研がないよりはよっぽど切れますし、だんだん上手になりますよ。
腕の毛が少しでも剃れれば、まずは上出来。十分使えます。

・鑿の刃の形

鑿は切れ味も必要ですが、刃の形も重要です。
刻み(加工)の上達と共に調整も練習していってください。

裏(鋼面)

鑿の裏は定規として使う部分なので、完全な平面を作ります
砥石を平面にして(ブロックなどで削る)刃先に力をかけながら研ぎます。
鑿の裏のへこみは、硬くて研ぎにくい鋼を平面を維持しやすくするためにあるものです。
裏を研ぐと鋼が減りますので、へこみが刃先を越えなければ仕上げ砥石でしか研ぎません。
鑿が短くなった時に、きれいにへこみが残っていることが理想です。

表の角度

鑿の刃の角度は33度~40度です。
鋭いほど切れ味が良く、鈍角なほど丈夫です。
鑿の鋼は個体差があり、硬い鋼は刃こぼれの時に大きく砕けます。
鋼の硬さや、加工する材料、研ぎあげの能力のバランスで決めればいいと思います。
僕は造作鑿であれば38度くらいで使っています。
切れるように研げるのであれば、丈夫な方が安全です。

刃の角

鑿の刃の角は重要な部分の一つで、両方を切り込みに使用します
理想は両方90度以上ですが、可能な限りということで、刃を直角に研ぎます。
鑿と木の練習で最も修得しにくいのが直角に研ぐことです。
誰もがどちらかに歪む癖があり、癖を治すのに苦労します。
僕は研ぐときに両手で押すイメージを持つと治りました。
こればっかりは、練習するしかありません。

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基本の鑿の選び方

鑿を始めて買うなら

・初めて鑿を購入する場合

幅・太さ・長さ

大工が最も使う鑿は30mmと24mmの薄刃の造作鑿です。
余り太いと細かい作業ができないので、一本選ぶなら24mmがいいと思います。

有名メーカーのお手頃価格の鑿です。

刃物産地の「播州三木」の職人用鑿

替え刃タイプ

替え刃の鑿もあります。
替え刃といっても、カッターナイフのように安くはありませんので、使い捨てるにはもったいないとは思います。
今の新築では、ほとんど鑿を使うこともありません。
とりあえず使い方を覚えるまでは替え刃でもいいと思います。

基準の値段

僕の使っている鑿は本職用(平均的)の造作鑿ですが、30mmで13,000円程、24mmで11,000円程です。
5,000円程でも売っていますし、有名な鍛冶屋さんのものであるとかなり高いものもあります。
はっきり言って高いから切れるというものではありませんので、
最初からあまり高いものを買うことはおススメしません。

・おススメできない鑿

※突き鑿はおススメしない

突き鑿(叩けないタイプ)は薄く削る事しかできません。
叩き鑿に比べ、調整が難しいので最初に買うのはおススメしません。

※組鑿はおススメしない

大工を始める時に組鑿(セット鑿)を買う人をよく見かけます。
鑿は必要な時に一本ずつ買えばいいと思います。
よく使うサイズだけが短くなっていきます。
組鑿を買うとしても、鑿を使いこなせるようになってからで大丈夫です。

※ハイス鋼は研げない

ハイス鋼に限らず、特殊鋼(鋼に様々な物質を混ぜて性質を変えた物)等、摩耗に強いとされる刃物があります。
使ってみると確かに違いを感じますが、摩耗しないわけではありません。
特殊鋼は非常に減りにくく、研ぎあげに時間がかかります。
使い捨てる替え刃ならハイス鋼でもいいですが、研いで使うなら炭素鋼(普通の鋼)をおススメします

・セットで必要なもの

鑿持ち運び用に鑿差し

鑿差しは、鑿を持ち歩くように腰袋に付ける専用ホルダーです。
刃で敗れないように丈夫な皮で出来ています。

・一本刺し

このタイプは一寸の造作鑿を持ち歩くのに最適な一寸四分サイズで、腰袋用のベルトに通して使用します。
一般的に鑿は左手で使用するので左側に装着します。

・二本差し

一寸鑿と八分鑿など日本持ち歩く場合に使用するタイプ。
最初は肌色ですがしばらく使用すると茶色になります。

大工が日常的に使用する道具をまとめたページはこちら

保管用に鑿巻きやケース

・鑿巻き

最も一般的な鑿保管用の袋です。
上下に収納できるので造作鑿をたくさん持っている場合でもまとめることができます。

・鑿ケース

造作組鑿専用のケースもあります。
日本の大工さんぽくありませんが、多少の雨でも影響を受けないので実用的です。

一本だけでも、道具箱に鑿を裸で入れるのは危ないので、ちょうどいいケースに入れることをおススメします。

砥石(鑿や包丁用)

砥石は中砥石(800番程度)と仕上げ砥石(8000番程度)の二つあれば大丈夫です。

※包丁研ぎにも使えます。

・中仕上げ砥石

プロの大工の中でも愛用者が多いキングの赤砥石です。
鑿研ぎなどは中仕上げ砥石から研ぐことが多いので最も多く使用します。

ご紹介しているタイプは厚み34㎜タイプです。
砥石は研ぐことや面直しを行うことで減りますので、頻繁に研ぐ方は厚みの大きいタイプを選んでください。

・仕上げ砥石

鑿研ぎにおススメの仕上げ砥石です。
仕上げ砥石はたくさんの種類がありますが、この砥石は値段も手頃で使いやすいタイプです。

よく水を含ませてから研垢をたくさん出して研いでください。

鑿の研ぎ方についての詳しくまとめたページはこちら

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購入時の仕込み

鑿の柄の仕込み方

鑿の購入時には、柄のカツラ(叩く部分際の指輪のような金物)を締める必要があります
カツラは柄が割れないようについているもので、叩いてはいけません。
カツラを叩くとカチカチと音がします。
大工の間ではカチカチはカッコ悪いこと(切れ味が悪い・叩き方が下手)とされていますので、締め込んで木の部分を叩くようにしてください。

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最後に

いかがでしたか?
鑿の基礎編ということで重要なことを厳選してみたのですが、だいぶ長くなってしまいました。
鑿はそもそものポテンシャルが高いので、初めての方が使っても他の道具とは比べ物にならない加工能力があります。
ぜひ一度試しに使ってみてください。

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