水平・垂直の墨出し道具【まとめ】レーザー墨出し機などの使い方

水平・垂直は大工の基本

大工工事では水平・垂直などの基準の測定や墨出しが必要になります。大工が使用する水平や垂直に関わる道具は定規・糸巻・下げ降り・水平器・水盛り管・レーザー墨出し器などたくさんの種類があり、うまく使い分けを行うことで施工効率が上がります

そこで今回はプロの大工が、近年のリフォームなどの工事で使用している墨出しや測定道具の特徴や使い分けについてまとめてご紹介します。リフォームではこれらの道具の使い方がスピードや仕上がりに直結し、大工の腕の判断基準となりやすいためポイントは確実に抑えておく必要があります。

コスパのいいおススメの道具も紹介していますので参考にしてみてください。

The English version of the article [How to Use Laser Levels and Plumb Bobs | A Skilled Craftsman’s Gentle Guide to Tools for Vertical Alignment] is available here.

目次

墨出し用道具画像
作成者プロフィール

説明用動画

大工工事においての水平や垂直
・壁工事を例にした4つの施工パターン
・新築での水平を確認する工事
・直角をだす(リフォームなど)

それぞれの道具の特徴
・定規の特徴について
・水糸の特徴について
・下げ降りの特徴について
・水盛り管の特徴について
・水平器の特徴について
・レーザー墨出し器の特徴について

それぞれの道具の使い分け
・使い分けのポイント
・レーザー以外の使い分けの例

それぞれの道具を選ぶポイント
・定規の選び方
・水糸(糸巻)の選び方
・水平器の選び方
・レーザー墨出し器の選び方
・レーザー台(おススメの台)

最後に

機械道具(パワーツール)についてのまとめページはこちら
大工道具(手道具)についてのまとめページはこちら
大工マニュアルのトップページはこちら

記事の作成者

深田健太朗深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。

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説明用動画

16.レーザーとサゲフリや糸巻などの使い分け【まとめ】水平垂直墨出し道具

このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。

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大工工事においての水平や垂直

水平や垂直は大工にとって不可欠

建築工事において壁などの形を作る大工は、非常に重要な役割を担います。
リフォームなどでは、様々な施工使用(要望や条件)があり、大工はどんな施工でも対応できる必要があります。

・壁工事を例にした4つの施工パターン

歪んだ壁のリフォーム工事においては、次の4つから状況に応じて施工法を選択します

1・既存壁を下地に壁材を張る

予算を抑える場合や、仕上がり寸法を大きく保ちたい場合など。

2・既存壁の捻じれを直し、平面下地を作る

仕上り寸法を保ちつつ、平面壁を作る場合など。

3・既存壁の手前に垂直な壁を作る

既存壁を解体せずに垂直壁を作る場合など。

4・既存壁を解体し、新たに垂直な壁を作り直す

既存壁を解体し、新たに垂直壁を作り直す場合など。

リフォームで便利な「ユニット型下地」についてまとめたページはこちら

・新築での水平を確認する工事

プレカットの新築では、床レベルは基礎頼りに行います。
新築の床も数mmの狂い(床としては問題ない)が出ていることもあり、造作工事では水平を出し直すことがあります

天井下地工事

天井も、床からの寸法で作ってもいいのですが、レベルを出し直す方法もあります。
天井施工後に壁材は垂直に張りますので、直角な壁材(ボードなど)を張る場合には施工性も上がります

階段施工

階段施工では、施工前に墨出しを行います。
階段の水平の狂いは致命的なので、レーザーなどで水平を出し直す方が確実です。

階段施工は墨出しをマスターすればかなり複雑な階段でも思い通りに掛けることができます

棚や窓など

棚や窓など、目線の高さに収まる水平造作は、生活の中で物を置いてしまいます。
また、目につきやすいこともあり、狂いを感じやすい部分でもあります。

目線の高さの造作は特に水平を出し直すことをおススメします

・直角をだす(リフォームなど)

プレカットの新築での直角は、土台敷き時の墨出しで行い、造作時に確認することは稀です。

リフォームやマンションの造作などでは直角は常に確認して施工を行います
一般的には通り墨を出し、通り墨を基準に全ての造作ラインを決める方法で行います。

墨壺の使い方についてまとめたページはこちら

サシガネの使い方についてまとめたページはこちら

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それぞれの道具の特徴

最も適した道具を選びましょう

・定規の特徴について

定規の特徴

定規は、水糸と同様に直線を確認する道具です。
水糸やレーザーと比べ、実際に面に当てることで確認できる道具なので、小さな狂いも簡単に確認することができます

定規の注意点

定規は長く硬い(アルミ製)なので、転倒や角当てでの傷に気を付ける必要があります。

墨付け用定規についてまとめたページはこちら

・水糸の特徴について

水糸の特徴

定規と同様に直線を確認するための道具です。
定規と比べ、長さが自在なので、長いスパンの確認が得意です

水糸は、触れると精度が狂うので、途中で糸に触れないように浮かして使用します。

水糸の注意点

水糸も墨壺と同様にカルコを使用するので、使用時にはカルコの扱いには注意が必要です。

・下げ降りの特徴について

下げ降りの特徴

自動巻きタイプのスタンダードな下げふり
木材はもちろん磁石もついているので鉄骨にも固定できます。

下げ降りは垂直を確認する道具です。
物理的に正確な構造なので、狂うことがありません。

下げ降りの注意点

揺れを止めるために重たいオモリを使用します。
オモリの先は尖っているので落とすと非常に危険です。

吊元がズレる場合があるので、吊元寸法の確認を癖付けましょう。

・水盛り管の特徴について

水盛り管の特徴

水平を確認するために使用していた道具で、現在の工事では使用しません
下げ降りと同様に物理的に正確な構造なので狂いません

プロが使用するレーザー墨出し器は非常に高価なので、DIYなど頻繁な墨出しを行わない場合であればおススメです

・水平器の特徴について

水平器の特徴

水平器は気軽に水平垂直を確認できる道具ですが、大工にとっては、精度が低い道具という位置づけです。
大工は下地から壁張りまで全て行いますので、精度が低いと施工性が落ちます

墨出しは、施工部分の端々に行います。
水平器は、長さが決まっているため、墨出しには向いていません

平面のある商品を取り付ける場合の水平・垂直の確認には水平器が向いています。

水平器の注意点

水平器も精密道具なので、振動に弱いため丁寧に扱わないと狂いが生じます

・レーザー墨出し器の特徴について

レーザーの特徴

レーザー墨出し器は、水平・垂直・直線・直角の全ての確認を一度にできる機械です。
レーザーは空間上で平面的に確認することができ、うまく活用することで、昔は不可能だった施工手順で施工することもできます

レーザーを使用する場面

新築では天井や造作の水平確認や、土台墨出しでの直角出しなどで使用します。
リフォームの下地工事ではレーザーが不可欠です

レーザーの注意点1

レーザーは非常に振動に弱いので、倒さないことはもちろん、可能な限り車に乗せておかないようにするなどの注意が必要です。
また、修理代が高く、修理や調整にも時間がかかりますので、数ある大工道具の中で最も丁寧に扱います。

レーザーの注意点2

レーザーの精度は狂う可能性があり、使用前には下げ降りと合わせるなどして、精度の確認を行います。
精度が狂ったレーザーを基準に施工を行わないようにしましょう

レーザーの注意点3

レーザー墨出し器のレーザー光線は非常に目に悪く、レーザーを直接覗くと一気に視力が落ちるそうです
レーザーを覗くと目にケガをすると思ってください。

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それぞれの道具の使い分け

使い分けるポイント

リフォームでは水盛り管以外の道具は全て必要になります。
それぞれの特徴に合わせて最も効率の良い道具を選んで使用します

・使い分けのポイント

レーザー墨出し器は全ての確認ができますので、レーザーを使用するかどうかが使い分けのポイントになります
レーザーは一度倒すだけで精度が狂って修理が必要になりますので、レーザー以外では効率が悪い時だけに使用します。

水平の確認は、全てレーザーを使用します

・レーザー以外の使い分けの例

定規を使用する場合

・仕上げ造作材の通りの調整
・加工(平面を削り出す)の表面の確認
・下地表面の通りの確認
など

糸巻を使用する場合

・下地の表面の通りの調整
・水平・垂直ではない天井や壁を作る場合
・フローリング張り出しの通りの決定
・新築での大引きの反り調整
・外部などでレーザーが見えない場合の墨出し
など

下げ降りを使用する場合

・新築で、柱や束の垂直確認
など

水平器を使用する場合

・平面のある商品の取り付け時の確認
・外部工事(軒天など)の水平の墨出し
など

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それぞれの道具を選ぶポイント

それぞれ特徴を活かせるものを選択

・定規の選び方

1mタイプ

シンワ カット師 併用目盛 1mタイプ
石膏ボードなどをカッターナイフで切るためにカット部がステンレスになっているシンプルな定規です。

※取っ手付きや幅の太い商品もありますが邪魔になるのでおススメしません。

2mタイプ

2m程のアルミ製の棒型定規(2cm×5cmくらい)も便利です。

※少し細いですが、レベルマン社のアルミ壁ズリ定規 という商品で2mの定規があります。

厚み方向に曲がらない硬さがないと浮かして使用できません

2m定規は、新建材ドア枠の内法寸法から、床養生分短い長さに切って使用することがおススメです。

・水糸(糸巻)の選び方

造作工事で使用する糸巻は、自動巻きが使いやすいです。
自動巻き糸巻は、バネの巻きなおしが面倒なので、長い距離用の手巻きのものを別に用意しておくのもおススメです。

・水平器の選び方

マグネット無し 450mm のシンプルタイプ
大工工事では、短い(20cm以下)水平器を使用する機会がありません
50cm程の物が1本あると十分だと思います。

・レーザー墨出し器の選び方

レーザー墨出し器には様々な機能のものがあります。

(参考)マキタ 充電式屋内・屋外兼用墨出し器
レーザー墨出し機は頻繁に修理(調整)を行うので、購入される際はお近くの金物屋さんでご相談されることをおススメします。

様々な機能

選ぶ上で最も効率に影響するのは光線の範囲の違いです。
また、電子ジンバル式と振り子式という違いがあるので、使用状況に合わせて判断してください。

他にも、リモコンで示した方向に自動でレーザーが回転する追尾機能が付いたものや、光線の太さが遠くに行くにつれて細くなるタイプなどもあります。
レーザー光線の色にも赤や緑と種類があります。

レーザーの値段について

レーザー墨出し器は、昔と比べかなり値段が安くなってきています。

15年ほど前には20万円から30万円と言われていました。
最近はネットで2万円程で購入できるようです。

修理について

レーザー墨出し器は調整や修理が欠かせない道具になります。

修理期間などは早い方が良く、代替え機の貸出の可否などメーカ選びが非常に重要になります。
先輩などに評判を確認して購入することをおススメします。

・レーザー台(おススメの台)の紹介

レーザーを購入される方におススメのレーザー台を紹介します。

シンワ 軽天用ホルダー 上下可動式
高さの微調整機能が付いているので、水平墨出しに最適です。
壁に据えることができるので、レーザーを蹴飛ばす(蹴飛ばされる)確率が減ります。

部屋の中心に据えたい場合は脚立で代用できますので、三脚を購入されるのであれば柱掴み式台をおススメします。

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最後に

今回は水平や垂直の墨出し道具をまとめて紹介させてもらいました。

墨出しは施工効率に大きく関係し、棟梁の必須スキルでもあります
それぞれの道具の特徴を知れば、画期的な施工手順を修得できる可能性もあります。

是非修得してください。

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