大工が使用するビスの特徴【プロの大工が紹介】木用・鉄用・RC用
今回は大工が使用するビスの特徴の違いと使い分けについてまとめました。
リフォームでは木工ビス以外にも、コンクリートビスやタッピングビスなどの特殊なビスも使用します。
大工工事(木部工事)が得意な大工さんでも、木部以外への取り付けに苦手意識を持っている方も多いと思います。
慣れてしまえばコンクリートや鉄骨も木部と同様に固定できますのでご活用ください。
目次
木工用ビスについて
・コーススレッド(一般木ネジ)
・細ビス(スリムビス・スマートビス)
・特殊作業用の専用ビス
商品などに付属されているビス
・化粧ビス(商品付属のビス)
・構造用木ビス
金属用やコンクリート用のビス
・タッピングビス(先が尖っているタイプ)
・コンクリート用ビス(直接固定タイプ)
ビスを使用する注意点
・ビスの混ざり対策
・鉄製ビスが使用できない場合
・せんだん応力について
・床組に使用するビスについて
建材や金物についてのまとめページはこちら
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記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
説明用動画
このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。
木工用ビスについて
・コーススレッド(一般木ネジ)
大里 ユニクロメッキ コーススレッド 徳用 半ねじ 4.2Φ×長さ75mm 400本入
最もオーソドックスな木ネジです。
使用目的について
コーススレッドを使用する主な目的は材料同士を引っ張る力を利用するためになります。
※他の目的で使用することもあります。
形状(素材)について
素材は鋼(硬い鉄)で、錆止めでクロムメッキを施してあります。
使用する長さ
主に使用する長さは90㎜・65㎜・51㎜・38㎜で、ほかに120㎜や75㎜28㎜も必要に合わせて使用します。
・細ビス(スリムビス・スマートビス)
ダイドーハント 軸細 コーススレッド 3.3x35mm (フレキ / 半ネジ ) [ 鉄 / クロメートメッキ ] (800本入)
メーカーによって様々な商品名がつけられています。
金色メッキと銀色メッキがあり、若干銀色の方が太い傾向があります。
使用目的
細ビスを使用する目的は木割れを起こさないためです。
※細ビスはコーススレッドと比べると引張力が弱いビスです。
形状(素材)
ネジ先が木割れ防止のために錐状に加工されていて、頭部分はフレキ(木を削る)タイプになっています。
素材は鋼(硬い鉄)で、錆止めにクロームメッキが施されています。
使用する長さ
主に使用するのは65㎜・50㎜・35㎜で、作業に合わせて90㎜なども使用します。
スリムビスの止め方(インパクトドライバの使い方)をまとめたページはこちら
・特殊作業用の専用ビス
コンパネ用や長押用、ウッドデッキ用などの作業専用に設計されたビスも使用します。
使用する目的
専用ビスを使用する目的は特定の作業の施工効率や強度を向上させるために使用します。
※専用ビスは概ねコーススレッドや細ビスと比べて値段が高いので施工手間を考慮して使用します。
専用ビス例1・コンパネビス
造作ねじ コンパネビス 3.8×38 500本入
コンパネとはコンクリート型枠用パネルの略称で、実際のコンパネは解体を行いやすくするためビスは使用しませんが、ベニヤ(合板)と相性が良いビスなので比較的使用する機会の多いビスです。
専用ビス例2・内装ビス(長押ビス)
TRUSCO 内装用木工ビス M4.2×38 100本入
内装ビスはコーススレッドと比べると軸が太く、ネジ先に割れ防止用の錐加工がされたビスです。
比較的短いビスも半ネジ(ビスの上半分にネジがない)タイプなので、コーススレッドより取り回しの良いビスです。
専用ビス例3・波板用ビス
ダイドーハント 波板取付ビス クリアー [ 木下地用 ] (ポリカ座金) 5x35mm (50本入)
波板用ビスはポリカ波板を固定するためのビスで、傘釘を打つことができない場合などに使用します。
専用ビス例4・ウッドデッキ用ビス
ウイング ステンウッドデッキビス 45mm
ウッドデッキ用ビスはウッドデッキの床板固定用のビスで、固定力と耐久性と化粧性の高いビスです。
商品などに付属されているビス
・化粧ビス(商品付属のビス)
化粧ビスは商品に付属されているビスです。
主にサッシや既製品枠で使用します。
使用する目的
化粧ビスを使用する目的は商品の取り付けや組み立てになります。
形状(素材)
商品の取り付けビスの色や形は様々なものがあります。
素材も鋼(硬い鉄)やステンレスのものがあります。
化粧ビスの注意点
・ビス潰れで起きる大きな問題
化粧ビスの頭は塗装されている場合も多く、ネジ頭のつぶれは非常に目立ちます。
比較的柔らかいビスもあり、コーススレッドなどのビスと比べてもネジ頭が潰れやすいビスです。
しかしネジ頭のつぶれは単なる失敗に収まらず、施工責任者としての信用に大きく影響を与えます。
化粧ビスを使用して取り付ける建材はお客さんが購入した建材(サッシや新建材)の取り付け施工です。
建材は決して安いものではなく、当然お客さんは納得しません。
そしてもう一つの問題は、その化粧ビスを失敗した大工さんは、家中の釘やビスを止めて家を組み立てている責任者だということです。
お客さんは「化粧ビスほど重要なビスを失敗する大工さんは隠れた部分のビスも失敗しているのではないか?」と不安に感じる可能性があります。
化粧ビスを扱う場合には細心の注意を払って確実に止付ける必要があります。
・ビスのねじ切れによる仕上がりへの影響
例えば玄関サッシの取り付けビス(化粧ビス)はステンレス製です。
ステンレスのビスは鋼のビスに比べ柔らかい特性があり、硬い下地(節など)に締め込んだ場合負荷に耐えきれずねじ切れて(途中で折れる)しまうことがあります。
ねじ切れたビスは除去することが難しく、除去できてもビスが一本足りなくなります。
最悪のケースはねじ切れた瞬間にインパクトドライバーの先でサッシを傷つけてしまうことがあります。
ビスのねじ切れや打ち込み角度のズレを避けるためには、後でご紹介する三角錐などで下穴を開けてからビス締めを行います。
・構造用木ビス
使用する目的
構造用ビスは構造金物(柱と横架材の引き抜き防止プレート)を固定するためのビスです。
構造用ビスは他のビスと異なり、せんだん応力(ビス軸に対してずらすような力に対応する力)の高いビスなので、せんだん力がかかる構造用金物の固定用に使用します。
形状(素材)
構造用ビスは鋼(硬い鉄)で出来ており、用途に合わせて長さが用意されています。
軸が太くしっかりしたビスなので、固定時の回転負荷に耐えるように四角頭のものが主流です。
先端形状が特殊加工されており、長いビスでも根元まで同じトルクで締め付けることができます。
金属用やコンクリート用のビス
・タッピングビス(先が尖っているタイプ)
使用する目的
大工がタッピングビスを使用する主な目的は、木部の化粧ビスとして使用するためです。
※タッピングビスは本来鉄工用なので、金属部分への止付けにも使用することがあります。
形状(素材)
タッピングビスは用途に合わせて様々なタイプがあります。
鉄工用ビスなのでネジピッチが細かく鋼(クロムメッキ)タイプとステンレスタイプがあります。
木部で使用するビスは先が尖っているタイプで頭の形が、ナベタイプ、皿タイプ、トラスタイプがあります。
・ナベタイプ
TRUSCO ナベ頭タッピングねじ ステンレス M4×20 70本入
ナベビスは材に全体的に丸くなっているタイプで木造では使用しません。
・トラスタイプ
オノカツ トラス 頭 タッピング ねじ ステンレス 4×20 110本入
トラスビスは表面が半球状で裏面(材に当たる部分)が平面になっているタイプです。
アルミ材などを併用する場合の化粧用に使用します。
・皿タイプ
オノカツ 皿頭 タッピング ねじ ステンレス 4×35 70本入
皿タイプは表面が平面で裏面(材に当たる部分)が円錐状になっているタイプです。
化粧木部やアルミ材の化粧固定に使用します。
※必要に応じて下穴の面取りが必要です。
・コンクリート用ビス(直接固定タイプ)
ヤマヒロ ビスコン サラ 4.0×25mm 200本入り
直接固定タイプのコンクリートビスです。
使用する目的
コンクリート用ビス(直接固定タイプ)を使用する目的は、RC(鉄筋コンクリート)造の建築物に下地を固定するために使用します。
コンクリート壁への止付けではコンクリート釘を使用することは少ない(釘打ち機の故障につながる)ので、比較的手軽な方法としてコンクリートビスとウレタンボンドの併用で止め付けを行います。
形状(素材)
コンクリートビス(直接固定タイプ)はコンクリートに下穴を開けて直接締め込みますので、ビスに合わせたサイズの下穴を開ける必要があります。
素材は鋼(硬い鉄)なので錆が発生する水回りでは使用できず、内装工事のみで使用します。
ビスサイズと下穴サイズ
内装下地材(35㎜~15㎜)の固定で使用するビスは60㎜~38㎜長さを使用します。
ビスの太さは5㎜タイプと4㎜タイプがあり、5㎜タイプの下穴は4.3㎜、4㎜タイプの下穴は3.2㎜になります。
※ビスメーカー(商品)によって締めやすさが大きく違うので、いくつか試すことをおススメします。
ビスを使用する注意点
・ビスの混ざり対策
ビス箱から一度出したビスを箱に戻す場合に、ビス長さ(種類)が混ざると事故(長すぎて化粧材を突き破るなど)の元になるので絶対に混ざらないように注意します。
ビス箱を開けた状態ではビス長さを確認しにくい(細ビスは特にわかりにくい)ので、空いた蓋の裏に長さをマジックで書き込んでおくことをおススメします。
・鉄製ビスが使用できない場合
鉄製ビスは2つの環境下では使用できませんのでステンレスビスを使用します。
水回り部分
鉄(鋼)は水分に触れると酸化(錆が発生する)しますので、水回り部分には使用できません。
※お風呂や外壁など
アルミ材の固定
鉄はアルミに触れていると延食(腐食)しますので、アルミ材の固定には使用できません。
※鉄製ビスが使用できない場合には一般的にステンレスビスを使用します。
・せんだん応力について
ビスは硬い鉄(鋼)で出来ています。
柔らかい鉄でできている釘と比べてビスはせんだん力(軸に対して横方向の力)に弱い特徴があります。
※釘にせんだん力がかかった場合柔らかいので曲がりますが、ビスは硬く粘りが少ないので折れてしまいます。
・床組に使用するビスについて
床組には長期的に大きな振動(歩行など)がかかり続けるので、使用する金物は振動に強いものを選ぶ必要があります。
特に細ビスは強い振動で折れやすいので床組への使用は避けるようにします。
最後に
いかがでしたでしょうか?
大工が主に扱うのは木材ですが固定する材料は木材だけではありません。
様々なビスを使いこなすことで大工工事も今まで以上にスムーズに行えますのでぜひ使ってみてください。