【サッシ大工解説】壁入隅やバルコニーの収まりについて|機能や取り付け
今回は大工が木造建築物で取り付けるサッシについてまとめてみました。
窓を取り付ける下地(窓台)の施工を行う場合もサッシの種類や収まりを理解している必要があります。
サッシを取り付けるのは大工ですが、やり直しをもとめられた場合にはたくさんの他業者さんが関わるため弁償額も高額になります。
そこで今回はサッシの種類やサッシの収まり、取り付けについてまとめてみました。
目次
サッシの種類の紹介
・建具形状の種類
・性能(機能)の種類
・収まりの種類
サッシと内部収まりについて
・サッシと窓枠について
・掃き出しサッシとフローリング
・内壁入隅とサッシの収まりについて
・階段とサッシの収まり
サッシと外部収まりについて
・サイディングの目地
・外部入隅の収まり
・バルコニーの収まり
サッシ固定の注意点
・固定釘(ビス)について
・化粧取り付けビスについて
・サッシ枠の対角の確認
・防水処理の注意点
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記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
説明用動画
※動画
このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。
サッシの種類の紹介
まずは木造住宅で使用するサッシの種類についてご紹介します。
・建具形状の種類
サッシは屋外建具なので、建具形状も様々です。
引き違いサッシ
最もポピュラーな形状のサッシです。
シャッター付きのタイプもあります。
ドアタイプサッシ
玄関や勝手口にはドアサッシが使用されます。
親子ドアタイプもあります。
片引きタイプ
玄関や勝手口などで引き戸が選ばれる場合もあります。
一般的にアウトセットタイプです。
出窓タイプ
出窓タイプのサッシもあります。
小型のサッシ
ルーバーやFIX、滑り出しなど近年では小型のサッシも多く使用されます。
アルミ庇(ひさし)
開口部の上部に取り付けるアルミ庇もサッシと同様に扱います。
・性能(機能)の種類
サッシには様々な性能が求められます。
サッシに付加されている機能の種類についてご紹介します。
防水・防虫・気密の性能
全てのサッシには防水・防虫・気密などの機能があります。
特殊仕様のための性能
サッシは用途に応じて様々な機能が付加されています。
・断熱性能
二重ガラス(ペアガラス)を使用した断熱性能の高いサッシがあります。
・結露を抑える性能
高断熱の建築物ではサッシ枠に結露が集中します。
サッシ枠での結露を抑えるタイプがあります。
・防犯性能
1階部分では防犯性能の高いサッシが選ばれます。
格子が付いているタイプやシャッターなどが防犯に効果があります。
・防火性能
防火地域では火災による熱でガラスが割れないようにサッシにも規制がかかります。
ガラスに鉄網が入っているタイプがあります。
・収まりの種類
そしてサッシには下地からの収まりによって種類が別れます。
半外付けサッシ
現在最もポピュラーな収まりが半外付けタイプです。
下地(屋外側)の内外にまたがって収まります。
外付け・内付けサッシ
下地(屋外側)から外側に収まるサッシを外付けサッシ、内側に収まるサッシを内付けサッシと言います。
外付けサッシは和室の開口などで使用されます。
内付けサッシはリフォームで見かけることがありますが現在では使用されていません。
アングルピース(アンピ)
近年のサッシは窓枠を使用することが一般的で、サッシと窓枠を固定するためのアングルピースという部材が付いています。
アングルピース位置(窓枠位置)が造作との収まりの基準となります。
※アングルピースはアンピと呼ばれ図面にはAPと表記されます。
アングルピースはオプションのようなものなので、納め方によっては意図的に「アンピ無し」で発注するパ愛があります。
土間埋め込み敷居
玄関サッシや勝手口は土間仕上がりの場合が多く、サッシ敷居を土間に埋め込むタイプがあります。
サッシと内部収まりについて
ココからはアンピ有りの半外付けサッシと内部(造作)との収まりについてご紹介します。
・サッシと窓枠について
近年はサッシと内壁を窓枠で納めることが多くなっています。
既製品の窓枠について
既製品の窓枠は20㎜厚で、アンピ内側と窓枠の面を合わせるための加工(アンピじゃくり)が施されています。
ジャストカット窓枠について
窓枠もジャストカットというプレカットを利用することがあります。
サッシサイズでカットされて組み立て用にダボや下穴加工が施されます。
発注時にはサッシサイズと共に壁厚に合わせて窓枠幅を指定します。
既製品窓枠(アンピじゃくり無し)
リフォームではジャストカットを頼まずに、「アンピじゃくり無し」の窓枠を加工して使用します。
※シート材はミゾキリなどでの加工は行いません。
「アンピじゃくり有り」の窓枠は、サッシ内側部分と同じ下地面となりますが、「アンピじゃくり無し」の窓枠はアンピの厚み分外側に収まります。
そのため窓台は収まりを考慮して位置を決めた上で、アンピ分広く作ることになります。
和室の白木枠など
和室で使用する窓枠は30㎜程の厚みの材を使用します。
この場合アンピじゃくり無しの既製品窓枠と同様に枠の外側で窓台を組みます。
・掃き出しサッシとフローリング
サッシには掃き出しサッシと呼ばれる高さの大きいサッシがあります。
※枠の形状自体は変わりませんが、寸法表記の方法が変わります。
掃き出しサッシの高さについて
掃き出しサッシは敷居のアングルピース下端をFLに合わせて納めます。
床下地が土台の上に24㎜合板と12㎜フローリングを使用する場合には土台から36㎜がFLとなります。
サッシを土台上に乗せた状態でアングルピース上端まで40㎜なのでアングルピース下端が37㎜となりますのでちょうどよく収まります。
アングルピースとフローリング
掃き出しサッシのアンピにはその後の作業でフローリングを差し込みます。
フローリングにはサネが付いているため張り方向によってはアングルピース部分が張りにくくなります。
アングルピースの取り外しについて
ここで知っておいてほしいのが、ほとんどのサッシのアングルピースは外すことができます。
※逆に言えばサッシ屋さんが取り付けて搬入しています。
張りにくい状況ではサッシ屋さんに「敷居のアンピは取り付けずに搬入してください。」と頼んでみてください。
※アングルピースが外れないサッシもあります。
・内壁入隅とサッシの収まりについて
サッシを収める上で、内部造作とサッシ位置が最も関わる部分が入隅です。
例えば内壁入隅に窓枠の外面が付くように収める場合。
入隅(柱面)からサッシを収める距離は、石膏ボード+窓枠=サッシのアンピ内側となります。
このような場合、窓枠の内側の固定方法なども考慮する必要があります。
・階段とサッシの収まり
階段室のサッシ高さ(位置)は、階段の収まりによって調整します。
もちろんサッシを取り付ける段階では階段は取り付けられていないため、階段の墨出しを行って位置を決定します。
サッシと外部収まりについて
続きましてサッシと外部の納まりについてご紹介します。
・サイディングの目地
サイディング(外壁)は垂直な継ぎ手や目地が入ります。
1階・2階で同じ形状のサッシを取りつける場合には、左右位置を正確に合わせておかないと目地とのズレが非常に目立ちます。
・外部入隅の収まり
続きまして外部の入隅とサッシの収まりについてご紹介します。
半外付けサッシは内外で外寸法が異なります。
外部の入隅では外側の外寸法を基準にサッシを納めます。
外壁は柱に通気胴縁+サイディングという収まりが一般的です。
そのためサッシは柱面から胴縁+サイディング+コーキングの厚みを取ったところがサッシの外側となります。
・バルコニーの収まり
続きましてバルコニーに取り付ける掃き出しサッシの収まりについてご紹介します。
バルコニーに取り付けるサッシは掃き出しサッシと呼びますが、防水を考慮してFLから250㎜程高い位置に取り付けることになります。
防水部分に取り付けるサッシの高さ
防水部分(バルコニーや屋根)に取り付けるサッシは、サッシの最も低い位置から防水面まで120㎜以上離す(上げる)必要があります。
FRP防水バルコニーの床構造
バルコニーの床構造はFRP防水や板金防水、ユニット型のものなどいろいろな種類もありますが、今回は例として比較的多く採用されているFRP防水の床構造をご紹介します。
一般的にバルコニーは水平耐力兼床下地である床合板の上に施工します。
その上に勾配用のパッキン+根太+12㎜合板+ケイカル板+FRP防水層のような複層構造となっています。
床合板からの窓台(敷居下地)の高さの求め方
床合板からのバルコニー床仕上がりがわかったところで、サッシの最も低い部分の高さ(120㎜上)が求められます。
サッシの最も低いところと、サッシが窓台乗る部分の差を計算してバルコニーの窓台の高さが決まります。
実際の施工方法(コツ)
バルコニーの施工は、窓台→バルコニー床→サッシの取り付け→サッシ下のケイカル板という施工順序になります。
バルコニーサッシの敷居はなるべく低く収めたいため、規定値ギリギリを狙います。
バルコニーの床は勾配なので非常に測りにくく思った高さになっていない場合も多くなります。
規定値が取れていない場合サッシを上げる(鴨居の窓台を解体する)必要が出てきます。
そのため作成者は敷居の窓台に対して鴨居の窓台を通常より27㎜高く取り付けます。
実際にサッシを入れた時に計画通りであれば鴨居の窓台に間柱(27㎜)を打ちたします。
10㎜上げたい場合には市域の窓台に10㎜のパッキンを足して、鴨居の窓台に17㎜のパッキンを足すことで解決します。
窓下地(窓台)について
サッシの収まりがわかったところで窓台(窓下地)を作ります。
窓台には水平垂直の精度と強度が必要になります。
収まりに応じて高さや左右の位置、下地の形状を決定します。
サッシ固定の注意点
サッシの固定(取り付け)は施工説明書や会社の防水仕様に合わせて行います。
ココでは取り付けの注意点についてご紹介します。
・固定釘(ビス)について
アルミサッシの固定には付属の固定釘(ビス)を使用します。
鉄釘(ビス)は延食反応によって腐食の原因になるため使用してはいけません。
・化粧取り付けビスについて
サッシ内側に使用する固定ビスやアンピビスは化粧ビスです。
サッシは想像以上に高価なこともあり、お客さんも正確な取り付けを求めています。
アネックス 下穴錐 木工用 3mm
ビス頭がなめたり、歪んだりしないように、三角下穴錐などで下穴を開けて固定します。
・サッシ枠の対角の確認
長方形の対角は同じ寸法になります。
サッシの障子(ガラス部分)やドアは正確な長方形なので、取り付けたサッシ枠の対角が悪いと正確に締まりません。
もちろん柱が垂直で窓台が水平であればサッシ枠も正確な長方形となりますが、近年では窓台もプレカットを利用するため水平に数㎜の狂いが発生します。
全て調整するとプレカットを利用する意味がないため、サッシの取り付けでは対角を測って垂直方向で微調整します。
・防水処理の注意点
サッシは大工が行う防水に絡む部材です。
大工は防水のプロではないのですが、施工順序の関係上防水に関わる処理を行う場合があります。
例えば
サッシの取り付け前に窓台に「ヨダレカケ」のように取り付けるウェザータイトという商品があります。
ウェザータイトは厚みがあるため窓下地(窓台)の寸法に影響します。
最後に
いかがでしたでしょうか
サッシは種類も多いので今回の内容だけで全てとは言えませんが、今回ご紹介した内容をベース知識として覚えておいてもらえば、初めて見るサッシでも違いなどから施工計画が立てられるはずです。
サッシはいろいろな知識と関わっていますので、知れば知るほど視野が広がります。
もちろん棟梁として必要な知識ですので、わからない部分はドンドン調べて詳しくなってください。