大工技能士【現寸解説動画あり!】独学合格するための刻み練習法
今回は一級、二級ともに建築大工技能士を初めて受験される方向けに試験の概要や練習のコツについてまとめてみました。
講習を受講される場合、短い講習機関の中で一発合格を目指すためには効率の良い練習が不可欠です。
現寸図作成・木づくり(加工)・墨付け・刻み・組み立ての練習のポイントを解説します。
目次
技能検定の概要について
・建築大工技能士について
・資格取得のメリット
技能検定が兼ねる2つの側面
・技能五輪、技能グランプリとは
・資格合格の練習に絞る
・資格合格のための練習
技能検定課題の特性
・各作業について
・制限時間について
練習を行う上でのポイント
・練習で作る数について
・作業別の修得難易度
・作業ごとの時間の重要度
技能検定合格の練習法
・数字の暗記
・課題以外で刻み練習
5つ練習する場合の目標目安
・1つ目の練習
・2つ目の練習
・3つ目の練習
・4つ目の練習
・5つ目(模擬試験)
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記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
説明用動画
このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。
技能検定の概要について
・建築大工技能士について
一級二級を問わず、建築大工技能士は国家資格で、一次試験が実技試験、二次試験は学科試験です。
受験資格には実務経験が必要で、学歴などで早く受験できる場合もあるので試験機関のホームページなどでご確認ください。
※学科試験については過去問のみの点数で合格することができる比較的難易度の低い試験です。
・資格取得のメリット
技能士資格のメリットは技術を資格として表すことができます。
技能士資格がないと請けられない工事もあるそうです。
建築大工技能士はもともとあまり知名度のない資格でしたが、近年スマホなどの普及で知名度のない資格でも内容を理解してもらいやすくなっています。
技能検定が兼ねる2つの側面
実は技能検定(資格試験)は、技能競技(技能五輪やグランプリの予選)を兼ねて行われています。
・技能五輪、技能グランプリとは
技能五輪やグランプリは日本各地で毎年行われる日本での技能競技の最高峰で、たくさんの業種で技能が競われます。
※地方によっては別で予選が行われている場合があるかもしれませんので、出場したい方は試験機関に確認してください。
・資格合格の練習に絞る
試験目的の方が競技レベルの仕上がりを求めて練習することで、練習期間が足りなくなるケースが多く、結果合格することができません。
どんな試験でも2度目以降の受験は気持ちが落ちやすく合格率が下がりますので、資格合格が目的の方は合格だけに絞って練習を行いましょう。
※技能競技を目指す方は採点基準が分かる環境で練習する必要がありますので、専門の講習を受けることをおススメします。
・資格合格のための練習
技能士の課題は、時間をかければ大工なら誰でも作ることができる課題です。
国家資格としての合格ラインは、大工レベルで時間内に作ることができたら受かると思って大丈夫です。
制限時間内に作り上げることが最大の目標となります。
技能検定課題の特性
・各作業について
実技試験では5つの作業を順番に行います。
作業は順番に、現寸図→加工(木づくり)→墨付け→刻み加工→組み立てです。
1・現寸図の作成
技能士課題は作成に必要な現寸図を書き、書いた現寸図を基に課題を作ります。
現寸図も課題なので内容が指定されており、書き上がった時点で提出して採点を受けます。
現寸図の原理について動画解説はこちら↓
2・加工(木づくり)
材料は1.5㎜程大きい寸法で支給されるので、鉋を使用して決まった形(サイズ)に加工します。
使用するトガ材(ツガ)は比較的固い樹種で、逆目も起きやすく非常に難しい作業です。
3・墨付け
技能士での墨付けは、墨壺と墨差しを使用することが指定されています。
墨付け後も材料提出を行い採点を受けます。
4・刻み加工
仕口の加工や材料のカットを行います。
ドリル以外の機械道具は使用できません。
5・組み立て
加工出来た材料を組み立てます。
仕口以外にも釘打ちで固定する部分もあります。
・制限時間について
試験時間は5時間30分(予備時間15分)
技能検定において制限時間に間に合わせることが最大の敵となります。
精度を落としてでも時間内に作り上げなければ失格になりますので、精度を上げるためには別の作業で時間の余裕を作る必要があります。
練習を行う上でのポイント
・練習で作る数について
講習で作る数は一般的に5つくらいです。
二級技能士の課題(踏み台)はプレゼントしても喜ばれますが、一級技能士の課題(屋根模型)は出来上がっても使い道が無く、ごみになってしまします。
たくさん作っても意味がありませんので、講習で用意される5つほどの練習材を作り上げる間に練習する必要があります。
練習材を無駄にしないように、一つ一つ作るごとに目標を設定して確実に練習を進めてください。
・作業別の修得難易度
作業の中で最も練習しやすい(いつでも練習できる)のは現寸図で、次に練習しやすいのは墨付けです。
最も練習しにくい(実力の差が出やすい)のは加工(木づくり)と刻み加工です。
練習しやすい作業
現寸図は自宅でも、紙と敷板(シナベニヤなど)さえあれば何度も書いて練習することができます。
墨付けは、一つの材料を鉋で削りなおして何度も練習することができます。
墨付け練習用の材料は、別に用意することをおススメします。
※現場で余った桟などの小さい材料を木工用ボンドで圧着して集成材を作ると、お金もかからず節も減らせるのでおススメです。
練習しにくい作業
木づくりは、実際の課題で練習を行わないとなかなかコツをつかみにくい作業です。
鉋を扱えるスキルがないと難しい作業ですが、替え刃式の鉋も使用可能なので、鉋が苦手な方でも合格は不可能ではありません。
刻み加工は、課題練習だけで修得するのは難しく、普段刻みを行っていない方が時間短縮を行うには、課題以外で練習する必要があります。
・作業ごとの時間の重要度
制限時間に最も影響するのは刻み加工の時間です。
墨付けと組み立てはもともと時間短縮が難しく、2つの作業で一時間20分ほどかかります。
刻み加工に3時間かけた場合、現寸図作成と木づくりを1時間10分で行う必要がありますので、合格は現実的に厳しくなります。
刻み加工にかける時間は、2時間程を目安にしましょう。
刻み加工は1時間30分程で刻むこともできますので、技能検定の作業の中で最も時間短縮が可能な作業です。
技能検定合格の練習法
・数字の暗記
現寸図や墨付けで時間短縮する方法の一つに勾配などの数字を全て暗記する方法があります。
この方法は大きく間違えるリスクがあり、合格したとしても実務で使えない知識なのであまりおススメではありません。
確実に暗記できる効率が高まる部分の寸法や勾配に絞って行いましょう。
・課題以外で刻み練習
刻み加工の練習は鑿での穴掘りと手ノコでの切断の技術次第ですので、穴あけ練習と切断練習を課題以外で行うと大きく効果があります。
現場で余った材料で、ホゾ穴を開ける、切断するなどの練習は休み時間でもできます。
精度と時間を気にしながら行ってください。
5つ練習する場合の目標目安
5つ練習する場合の練習目標の目安について
・1つ目の練習
目標時間は10時間。
1つ目は時間がかかって当たり前です。
課題の形やルール、流れを理解しながら確実に形にすることを目標にしましょう。
後の練習で確認するために、可能な限り精度よく作り、解体しやすいようにビスで固定するのがおススメです。
・2つ目の練習
目標時間は8時間
課題や流れを確認しながら作りましょう。
2つ目からは時間を図って自分の苦手な作業(時間短縮が必要な作業)を理解しましょう。
※作業ごとの開始時刻と終了時刻を記入して後から計算してください。
練習では間違えてもいいので、精度を保ちながら時間短縮を目指しましょう。
間違えた数だけ本番で間違えなくなりますので、間違えることを怖がる必要はありません。
・3つ目の練習
目標時間は6時間
二つ目と同様に行います。
3つ目からは合格のための作戦を立てましょう。
それぞれに得意な作業苦手な作業があると思いますので、講習参加者と情報交換しながら自分に合った作戦を考えます。
工夫することこそ大工の本質です。
・4つ目の練習
目標時間は5時間半
4つ目は時間内の完成を目指しましょう。
この時点で間違いやすい部分を見つけて対策を考えましょう。
時間内に作ることができそうであれば採点基準を確認し、より精度良く作ることにも取り組んでみてください。
・5つ目(模擬試験)
目標時間は5時間半
5つ目は実際の試験だと思って行いましょう。
本番に備えて必要道具のチェックリストを用意しましょう。
書き込みのある書類の持ち込みはできませんので、確認しておきましょう。
組み立て時には課題通り釘を使用してください。
最後に
技能検定や技能大会は、とても効率がが良い技術修得の場です。
実務では間違いは許されませんが、間違えてもいい環境はたくさんのアイデアを試すことができます。
最初は10時間以上かかる作業を5時間半に終わらせることができれば、実務での作業も半分の時間で終わらせる方法を見つけられるかもしれません。
間違えないための確認や複雑な加工図を理解することなど、実務でも必ず役に立つことがあります。
せっかく取り組むのであれば全力で練習して、一発合格を目指してください。
しっかり練習すればきっと合格できるはずです。