建築図面について【プロの大工が解説】種類や作成方法まとめ

大工に関わる建築図面

今回は大工さんが建築で使用する図面についてまとめてみました。

リフォームなどでは大工さんが「図面は俺の頭の中にある」と言って工事を進めていることもありますが、お客さんが希望する仕上がりに完成さるために工事関係者間で目標(仕上がり)の共有を行う必要があります。

図面を書くスキルも大工にとって武器になるので今回の記事で興味を持ってもらえたらと思います。

目次

説明用動画

設計士の意外な定義
・設計士とは
・建築士とは

立場によって変わる図面の目的
・建築図面の目的と立場
・建築図面の目的まとめ

建築図面の種類について
・平面図(設備図や構造図など)
・立面図
・断面図
・矩計図(かなばかり図)や詳細図
・加工図(現寸図)
・姿図(パース)

建築図面のルール
・図面用の線種について
・縮尺による表現の違い

建築図面の作成方法
・手書き(ラフスケッチ)
・平行定規
・CAD

最後に

記事の作成者

深田健太朗深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。

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説明用動画

このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。

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設計士の意外な定義

建築図面について解説する前に混同しやすい設計士と建築士の違いについてご紹介します。

・設計士とは

設計士が行う設計とは計画やプランを立てることです。

設計は建築士に限らず誰でも行うことができ、設計士は大工と同様で設計士を名乗るための特別な資格はありません。

・建築士とは

建築士とは国家資格である建築士資格(一級、二級、木造)を持つ者です。

※一般的には建築士のことを設計士と呼びますが、建築図面については建築士でしかできない業務があるのでご紹介させていただきました。

次世代の大工に不可欠な建築資格について【プロが解説】

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立場によって違う図面の目的

・建築図面の目的と立場

建築図面は様々な目的で利用します。
図面によっては利用する人が理解しにくい形式で書かれていることもあり、目的を理解することで状況に応じた建築図面を用意することができます。

設計(お客さんと設計)

建築図面の目的一つ目は、お客さんの理想の形を図に表すことです。

お客さんが建築士事務所に設計を依頼した場合、建築士がお客さんの理想の暮らしに合わせた希望の形を建築図面に表します。

※ここで作成した図面をもとに会社を探します。

契約(お客さんと工務店)

二つ目の建築図面の目的は工事請負契約の添付書類にすることです。

お客さんは希望する工事内容(図面)をもとに工務店と工事請負契約を行います。

※書面による契約は任意ですが、トラブル防止のために行うことが一般的です。

申請(建築士から知事)

三つ目の建築図面の目的は建築確認の申請に使用することです。

建築物の建築には都道府県知事(建築主事)の確認が必要です。

※この業務は建築士だけが行うことができます。

工事(施工者や現場監督)

四つ目の建築図面の目的は、工事業者に工事内容を共有することや、工事期間中の打ち合わせの議事録にすることです。

工事中はたくさんの業者さん(施工者)が工事を行います。
お客さんが依頼した工事内容を施工者に伝えて希望通りの仕上がりを目指します。

リフォームでは工事を始めてみないと決められないことも多いため、工事中の打ち合わせ(工事内容の決定や変更)も行われます。
打ち合わせで決定した内容についてはすぐに図面に書き込みを行い関係者全体で共有する必要があります。

・建築図面の目的まとめ

建築図面の目的は契約や申請など確実な形式が求められる場合と、お客さんの希望を反映するための分かりやすい形式が求められる場合があります。

申請や契約に利用するための図面はお客さんが理解しにくい形式なので、設計や工事などお客さんが深くかかわる部分では理解しやすい図面を別で用意することが理想と言えます。

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建築図面の種類について

二級建築士試験製図勉強のコツ

建築図面には用途によって様々な種類があります。

・平面図(設備図や構造図など)

平面図の原理イラスト

平面図の切断イメージ

建築に最もポピュラーで最も必要となる図面です。

平面図は床から1500㎜程の高さで水平方向に切断した建築物を真上から見た図(断面図)です。
平面図は情報が記入しやすい図面で、敷地に対しての建築物の配置や商品名、高さ、寸法など様々な情報が記されます。

設備図

電気や設備などの収まりを示す電気図面や設備図面も平面図を用いて作成します。
電気や設備用の図面では専用の記号で表記されます。

構造図

構造材の姿図イラスト

構造材(柱や桁、束など)

構造部材について記した構造図も平面で表します。

・看板板

大工が墨付けを行う場合に大工自らベニヤ板で作成する「看板板」という図面も構造図です。

・プレカット図面

プレカット工場から部材と共に支給されるプレカット用の構造図は、仕口や継ぎ手が分かりやすいように記号化されて表示されています。

屋根伏せ図

屋根伏せ図は屋根を真上から見た平面形状を表す図面です。
屋根形状や勾配方向などの確認に利用します。

・立面図

立面図や屋根伏せ図イラスト

立面図や屋根伏せ図のイメージ

立面図は建築物を真横から見た図です。

東西南北の四方向から表され、主に建築物の形状や外壁の収まりの確認に利用されます。

・断面図

断面図や矩計図イラスト

断面図や矩計のイメージ

断面図も横方向から見る形式の図面ですが、立面図と違い建築物を任意の垂直面で切断した断面を表した図面です。
断面図の切断部分と図面方向は平面図に表記します。

・矩計図(かなばかり図)や詳細図

矩計図

矩計図は基礎から軒先までの納まりなどを記入した断面詳細図です。
階層による仕様の違いや防水や断熱などの建材の組み合わせなどの確認に適した図面です。

詳細図

特に細かい収まりや寸法の確認が必要な場合に、部分的に拡大表示した図面を作成します。

・加工図(現寸図)

加工図はこれまでご紹介した仕上がりや収まり図と違い部材の加工寸法を表す図面で、設計士ではなく施工者が作成します。


野地板の大きさを知りたい場合、屋根伏せ図には水平寸法しか記入されていませんので、野地板が平面となるように調整した図面を作成して確認や計画を行います。

現寸図

大工が階段の収まりや屋根材(隅木など)を作成する場合に現寸サイズで作成する加工図を現寸図と言います。

割付図など

割付けなどを図面で計画する場合もあり、現寸サイズ以外でもCADを利用して寸法を確認することもできます。

・姿図(パース)

姿図は仕上がりを表す立体図です。

奥行きがあり3方向(幅、長さ、高さ)の寸法を同時に記入ことが可能なので、大工も実は姿図を見た方が作りやすい場合があります。

パースの描き方についての解説動画です。

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建築図面のルール

・図面用の線種について

建築図面に書き込む線には様々な種類があります。

※一般的に黒一色で書き分けます。

断面線

建築図面では断面部分を太線で表します。
例えば平面図の外壁、柱、ガラス部分、扉についても切断された断面部分なので太線で表します。

※太線を鉛筆で書く場合には黒光りするほど濃く作図することで図面にメリハリがついて非常に見やすくなります。

見えがかり線

見えがかり部分は細線で表します。
切断部分よりも奥にある窓枠や敷居、フローリングや家具などは細線で表します。

※細線を鉛筆で書く場合には鉛筆を作図中回転させるなど、一定の太さの濃い細線を目指します。

断面より手前部分

断面図より手前のもの(見えがかりの逆)を表す場合は点線(細線)で表します。
何を表しているか分かるように文字で補足する必要があります。

芯や空間芯など

隣地境界線や芯、空間などの物体ではないものなどは一点鎖線(細線)で表します。
吹き抜け空間は部屋角を一点鎖線で斜めに結んで表します。

文字(寸法)

・文字

室名などは部屋の中心部分に記入し、棚などの線だけで表現できないものは少し小さい文字で補足します。

・寸法

寸法は幅に対して横向きで記入し、単位は㎜表記でカンマも記入します。

・高さ

高さはFLからの差を「±高さ」で記入します。

・縮尺による表現の違い

建築図面は1/100や1/50などの縮尺で作成します。
縮尺によって必要な情報が違うので記入する表現方法が変わります。

1/100図面の場合

木造住宅の図面で良く用いられる1/100の図面では壁を一本の実線で表し、窓枠やサッシ形状などは記入しません。
家具や建具は記号で記入します。

1/50図面の場合

1/50の図面になると壁は二本実線で表し、窓枠やサッシなどの形状も記入します。

1/50で書き込む材料記号イラスト

1/50図面程の縮尺から断面部分に材料が分かる記号を記入します。

 


化粧造作材には細かい斜線
構造材は材角からクロスした斜線など

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建築図面の作成方法

建築図面の作成方法もいくつかあるのでご紹介します。

・手書き(ラフスケッチ)

手書き図面でも、上記で紹介したルールさえ守っていれば建築図面として十分に使用できます。
方眼紙を使用するだけでも寸法が狂いにくくなります。

・平行定規

建築士の製図試験で使用する方法です。
平行定規という上下可動する平行な定規が付いた図面専用台を使用します。
三角定規やテンプレートなどを併用して黒鉛筆で記入します。

現在でも手書きならではの風合いに価値を見出して手書きで設計を行っている設計事務所もありますが、CADが普及している現代では建築士試験以外で使用することは稀です。

・CAD

パソコンで図面を書くソフトをCADと言います。
CADのソフトにも様々なものがありますが、平面(2D)CADと立体(3D)CADの2タイプに分けられます。

平面(2D)CAD

CADのレイヤイラスト

レイヤのイメージ

平面CADで最も多く使用されているのJw_cad(無料ソフト)というソフトです。

平面CADは簡単に言うと線を描くソフトで、色や線を変えられ寸法線や文字入れも簡単に行えます。

レイヤという重ねた透明フィルムのような機能があり、レイヤごとに書き入れた図面の表示、非表示を切り替えることで一つの図面から様々な形式の図面を作成することができます。

平面CADで作成できるのは平面図や立面図だけではありません。
プレカット図面のような看板板はもちろん、複雑な現寸図や透視法を利用してパースも作成することができます。

立体(3D)CAD

3DCADはパソコン上に立体物を作るようなソフトです。

3DCADソフトもいろいろありますが、有名なところでVectorWorksAutoCADなどがあります。

3DCADでは平面図面から高さを設定して立体図形を作成するため、当然平面図面も作成することができます。
しかし高価な上、平面専用ではないので使い方が複雑で平面図面の作成には向いていません。

※立体物の設計は実際に模型を作るのと変わらない手間がかかります。

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最後に

いかがでしたでしょうか?
大工をしていると稀に非常にわかりづらい図面を渡されることがあり、そのような図面は施工効率が落ちるので思い切って作成し直した方が良い場合があります。

実際に大工が図面を作成して対価を得られるかは工務店との交渉次第ですが、図面の作成は大工にとって必要な「頭の中で物を組み立てる計算力」を鍛えることができます。

機会があればぜひ図面作成のスキル修得にチャレンジしてください。

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