二級建築士試験の特徴やコツ【大工用】一発合格のポイント
今回は大工さんが国家資格である二級建築士試験にチャレンジする際のコツをまとめました。
作成者は建築士試験を若い頃に独学で挑戦し挫折を経験、その後資格学校に通い学科試験を合格するも実技試験に落ちて次年度に合格を果たした経験があります。
試験を振り返っていくつかコツや後悔しているポイントがあります。
これから試験に挑戦される方向けには一発合格を果たしてほしいのでコツをまとめてみました。
目次
二級建築士試験の概要
・受験資格の変更
・建築士試験の特徴
・建築士試験の難易度
スケジュールについて
・試験のスケジュール
・一週間の勉強スケジュール
二級建築士試験の科目
・一次試験(学科)の科目
・二次試験(実技)
学科試験の勉強のコツ
・資格学校の利用法
・構造(計算について)
・法規の勉強法
実技試験の勉強のコツ
・こだわりはマイナス
・一次試験までの図面練習
記事の作成者
深田健太朗 京都府出身 1985年生
一級大工技能士や二級建築士、宅建士など住宅に関連する国家資格を5つ持つ大工です。
人生で最も高価な買い物である住宅に関わることに魅力を感じて大工職を志しました。
大工職人減少は日本在住の全ての方に関わる重大な問題だと考え大工育成のための教科書作りや無料講習を行っています。
説明用動画
このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。
二級建築士試験の概要
・受験資格の変更
近年二級建築士試験の受験資格が改定されたのでご紹介します。
受験資格について
二級建築士の受験には建築の実務経験(学歴などにより必要期間が変わる)が必要でした。
近年の改定で、受験資格に必要だった実務経験が登録要件に変更されました。
以前=実務を積む→実務経験年数に達する→受験→合格→登録
現在=実務経験中に受験→合格→実務経験年数に達する→登録
実務経験について
建築士の登録に必要な実務経験は大工経験だけでも計算に含むことができます。
以前は大工見習い期間も実務経験に含むことができていましたが、現在は棟梁のような現場管理などを行う場合のみ実務経験に算入されます。
・建築士試験の特徴
講習費の高さ
一級、二級共に建築士の試験講習の講習費は他の試験に比べて割高です。
作成者が利用した日建学院の二級建築士のフルコース講習で60万円程でした。
※通信系の資格学校はかなり安い講習もあります。
勉強量(試験範囲)の多さ
建築士試験は他の試験と比べて非常に幅が広い範囲から出題されます。
覚える内容が多いため勉強が長期戦になるので独学や通信学校で続けるのは強い心が必要になります。
・建築士試験の難易度
難易度(合格率)
二級建築士の合格率は一次、二次共に50%程ですので、両方合わせると25%となります。
※記念受験が多い宅建試験などと違い、お金や時間をかけて受験される方が多いため実質的な合格率になります。
学科試験に合格するためには6割程得点する必要があります。
実技試験は試験機関によって合否とランクが発表されるだけなので細かい得点を知ることができません。
学科試験の問題の質
一次試験(学科)の問題は五指択一で、ひっかけ問題などがありませんので知っていれば解ける問題です。
講習中に行われる中間試験などの得点と本試験での得点のズレがあまり生じませんので試験数か月前に合格ライン(全教科8割程の得点)に達することもあり、そこまでが学科の試験勉強となります。
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スケジュールについて
・試験のスケジュール
二級建築士試験は、例年一次試験が7月の中旬、二次試験が9月の中旬に行われます。
一次試験(学科)の後二次試験(実技)までの期間が2カ月しかありません。
実技試験は製図の試験ですので、2か月で修得できなければ翌年の受験になります。
学科試験を合格すると、翌々年の実技試験まで学科試験を免除されますが、実技試験の合格率は年が経過するごとに低下すると言われています。
・一週間の勉強スケジュール
資格学校(日建学院)に通っている場合の一週間の勉強スケジュール(量)についてご紹介します。
資格学校は週に一回(主に日曜日)に学校に通い勉強を行います。
平日は自宅で予習や復習、過去問の課題などを行います。
※上記したように勉強期間途中で行われる中間テストで合格ライン(すべて8割ほどの得点)まで到達すれば後半の勉強量は減ってきます。
二級建築士試験の科目
・一次試験(学科)の科目
ここでは一次試験(学科)の科目について軽くご紹介します。
学科試験は4科目あり、計画、法規、構造、施工です。
計画
計画は設計のプランを立てるための知識についての科目で、人が暮らすために適している環境などについて学びます。
小学校の理科で習った内容や実生活と重なることも多く、理解しやすく覚えやすい科目です。
法規
法規の試験は建築基準法や都市計画法などの建築に関わる法令から出題されます。
この試験では法令集という辞書のような本を持ち込むことができるので、法令集をいかに正しく早く引けるかという百人一首カルタのようなゲーム性のある試験です。
法令集にはインデックスやアンダーラインを加えることができるので、試験までに使いやすい法令集に仕上げます。
構造
構造は建築物の構造についての知識の試験です。
構造では構造計算の基本を学ぶので計算問題が出題されます。
建築物の構造の中には木造の構造も含まれるので大工さんであれば常識的に答えられるラッキー問題も多数出題されます。
施工
施工は、請負契約の内容や工程管理など現場監督(施工管理)の知識についての試験です。
大工でも中間検査を受ける場合に決まりがありますが、他の業種でも決まりがあるので建築物に関わる決まりを全体的に学びます。
施工でも大工の実務経験で常識的に知っている問題が出題されます。
大工知識についての問題は大工以外の方には得点しにくい問題なので、二級建築士試験は全般的に大工にとってアドバンテージのある試験になります。
・二次試験(実技)
二次試験(実技)の内容についてご紹介します。
木造とRCが年によって変わる
二次試験(実技)の課題は毎年変更されて、試験当日に発表されます。
基本的には木造→木造→鉄筋コンクリート(RC)造→木造、というように木造が2年続いて鉄筋コンクリート造という順番です。
実務との違い
実技試験(製図)については大工知識が使えそうで使えない試験です。
木造であっても現在は使わないような古い工法や、試験用の不思議な間取りで設計する古語が必要です。
※製図試験を受けるだけであれば実務を全く知らずに勉強をしている方が受かりやすいような気がします。
文字の記入量
製図の試験では一枚の図面でかなりの量(大学ノート1ページ分)の文字を記入します。
元々字が汚い方もいると思いますが、殴り書きさえしなければ大丈夫です。
数字については設計図面にとても重要なので文字潰れなどは確実に減点されます。
学科試験の勉強のコツ
・資格学校の利用法
1単元の勉強スケジュール
一つの単元の勉強は土曜日(講習日前日)からスタートします。
・講習前日(土曜日)
土曜日に翌日に行う範囲の教科書を一度読み込みます。
教科書を数十ページ読むことは非常にしんどいですが、翌日の講習内容の記憶に大きく影響します。
・講習日(日曜日)
日曜日に学校で講習と小テストを行います。
ここまでの勉強を集中して小テストで良い点を取ることで記憶力が高まると同時にモチベーションも高まります。
・講習後(平日)
月曜日から金曜日には復習と単元範囲の過去問を解きます。
二級建築士の学科試験も過去問を覚えれば確実に合格できる試験です。
教科書読み(計画、構造、施工)
二級建築士講習は勉強期間中に全ての範囲を2周以上勉強します。
1週目では上記のように学校に出された課題を全て行うことが効率的ですが、1周分の講習が終了した時点での定期テスト(全範囲のテスト)で一定の得点が取れているようであれば、計画、構造、施工に関しては2周目の講習である復習を行うよりも教科書の読み込みの方が得点につながります。
覚えた過去問の演習は効率的ではありません。
二級建築士の試験範囲は広いので、過去に出題されていない問題も毎年多く出題されます。
過去出題されていない内容も教科書に載っていますので、教科書を読むことで得点確立を飛躍的(各科目5問以上に影響)に上げることができます。
・構造(計算について)
複雑な計算は出ない
二級建築士で出題される計算問題は難しくありませんが、数学が苦手な方には教科書での勉強(映像講習以外)で理解するのは難しいかもしれません。
二級建築士の計算問題は方程式を覚えて当てはめて簡単な計算を行うだけなので、できるだけ映像講習を受けて苦手意識を持たないようにしましょう。
基礎は資格学校で学べる
作成者は中学校時代に全く勉強していませんので2÷(-1)が分からないところから勉強しています。
分数の割り算など数学の基礎も資格学校に行ってから習いました。
そこから勉強しても計算問題は解けるようになりますので心配いりません。
・法規の勉強法
ここでは作成者の受験後に受験した友達が絶賛してくれた法規の試験のコツをご紹介します。
法規の試験も五指択一で出題されますが、基本的に暗記できないような細かい問題なので法令集を確認しながら回答します。
法令集について
建築士試験に持ち込める法令集は試験機関によって指定(辞書のようなシンプルなもの)されて、インデックスやアンダーラインなどを書き込むことは認められています。
法令集は膨大なページ量なので資格学校からアンダーラインを書き込む見本が渡されます。
見本を見ながらアンダーラインの書き込みやインデックスの貼り付けを受験者自ら行います。
自分の色でアンダーラインの追加
学校が指定するアンダーラインは赤と青の二色です。
問題を解く中で条文が見つけられないこともあり、その場合には自分の色(緑)でアンダーラインやページ数を追加します。
問題を解くごとに自分の色(緑)の書き込みが増えていくので、最終的には全ての過去問が一目で見つけられるような法令集に仕上がります。
実技試験の勉強のコツ
・こだわりはマイナス
上記したように設計をするための試験であるにもかかわらず製図試験で求められる間取りは少し変わっています。
実務を経験している者にとっては違和感がありますが、それは採点について考えると理解ができます。
採点の方式
毎年たくさんの方が二級建築士の試験を受けますので、採点をされている方も膨大な図面を採点することになります。
採点方法はブラックボックスですが、現実的に公正な採点を行うとなると間取り、文字、線、文章など、部分ごとに分けて、それぞれを別々に採点していることが予想されます。
こだわりは採点できない
別々の採点方式の場合トータルでの加点は行いにくく、減点方式で行われていることも予想できます。
製図試験ではこだわりを捨てて、普通通りで減点の少ない図面に仕上げることが最も合格に近い方法と言えます。
・一次試験までの図面練習
そしてもう一つの製図の試験のコツ。
ココが最も作成者が後悔している部分なので共有したいと思います。
一次試験から二次試験までの期間
二次試験(製図)の練習は、一次試験の終了直後に自己採点で合格が確実と判断してから取り組むことになっています。
一次試験から二次試験まで約2か月なので急いで製図練習の準備を始めます。
本来講習で習うべきこと
講習に通う目的は図面を書く練習だけではありません。
講習中に試験の癖やプラン(エスキス)について修得する必要があります。
二級建築士試験で求められる図面の量は膨大で、試験日(練習を重ねた状態)で4時間ほどかかります。
図面を書いたことがない人がその図面を写す場合10時間以上かかります。
2カ月しかない練習期間を図面写しに使ってしまうと、肝心の合格のための講習を受ける時間が無くなってしまいます。
一次試験(学科)の学習には余裕がある
資格学校に通っている場合、学科試験の講習期間に大きく余裕を見ています。
作成者も一次試験前は一カ月ほど勉強をしていない期間がありました。
図面を書いたことがない状態で製図講習に臨むことは非常に効率が悪い方法です。
一次試験までの余裕を利用して図面写し(5枚程)を行うことをおススメします。
加えて一次試験で余裕を作るために学科勉強のスタートダッシュは欠かせません。
最後に
いかがでしたでしょうか?
二級建築士の学科試験の難易度は実際に合格してみると独学でも十分に合格可能だとは感じます。
(実際に独学合格の方もたくさんいます。)
試験勉強を行う期間は長ければモチベーションが下がりやすいので、可能な限り一発合格を目指すことがおススメです。
二級建築士の講習費は非常に高額ですが、合格しなければ時間も無駄になりますので短期集中で取り組むことをおススメします。