次世代の大工に不可欠な建築資格について【プロが解説】

建築士は次世代大工に不可欠な資格

大工になるために資格がいらないと言われていますが、持っていないと困る資格もあります。
今回は大工を行う上で不可欠な建築資格の必要性についてまとめました。

※建築資格とは建築士(一級・二級・木造)及び建築施工管理技士です。

目次

説明用動画

大工と建築士の関係
・建築士は大工の分業
・大工と建築士の役割の違い

ネット環境の普及による影響
・大工の情報が調べられる影響
・DIYとプロの違いが曖昧に

建築資格を持つメリット
・大工仕事が楽しくなる
・棟梁としてのメリット

取得していないことでのデメリット
・資格者にとって建築知識は常識
・技術と同等に比較される知識

知識と常識の関係

最後に 

説明用動画

このページの説明用動画です。
文字で伝えにくい部分は、映像で詳しく説明しています。

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大工と建築士の関係

建築士は大工の分業職

建築士は設計や工事管理を行う国家資格です。
建築士 – Wikipedia

・建築士は大工の分業

建築士制度の歴史は70年前の昭和25年に設定されましたが、制度ができる前は住宅の設計を大工が行っていました。
本来大工が行っていた仕事である設計を行う建築士は大工の分業になります。

近年大工工事にもボード張り業者や建て方業者、解体、足場などたくさんの分業がありますので大工工事の内容も減りつつあります。

しかし、棟梁(現場の施工責任者)を目指す場合には、分業の行う作業(本来大工が行う作業)も行うことができる必要がありますので、住宅の設計を行う建築士資格は大工に不可欠な資格となります。

・大工と建築士の役割の違い

大工と建築士には役割の違いがあります。

建築士の知識は時代と共に建築に求められる需要は複雑化し、建築士知識は住宅建築にとどまりません。
建築士の仕事は化学的、法的、社会的に建築物に求められる最低限の規定を守り、お客さんの暮らしに合わせた間取りを設計し、施工時に設計図面の通りに施工が行われているかチェック(監理)を行います。

建築士を取得してみると、建築士が木造住宅についてどれほどの知識を持っているのかがわかります。
木造住宅の工事には、木材の実質的な強度や施工効率、新しい建材の知識や不動産価値についての知識が必要ですが、そのほとんどを建築士では学びません。

例えば建築士は設計した建築物の施工費や不動産価値(金銭的な知識)について知りません。

お客さんの財産を守るためには建築士と大工の両方の知識が必要ですが、建築士が大工知識を得ることは難しいので、大工が住宅の専門家として建築士を取得する必要があります。

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ネット環境の普及による影響

近年のネット環境の普及によって、大工の建築資格の必要性が高まっています。

・大工の情報が調べられる影響

少し前までは大工さん個人情報をネットで調べることは稀でした。
近年では商品の購入時にネットで調べることは当たり前になっています。

以前は大工さんが名刺を持つことも少なく、資格所有者でもお客さんにアピールする機会は滅多にありませんでした。
現在ではSNSなどで個人的に発信する大工さんも増えつつあり、今後大工さんの情報もネットで調べることが当たり前となることが予想されます。

ネットはたくさんの情報を一度に調べることができるため資格所有者も簡単に見つかりますので、資格を持っていないことが今後デメリットになりやすくなります。

・DIYとプロの違いが曖昧に

近年DIYが注目されテレビでもよく取り上げられ、YouTubeでもたくさんの専門チャンネルが視聴されています。

DIY(日曜大工)は昔から行われていたことなので、今に始まったことではありません。
しかし近年のDIY情報にはプロの仕事とDIY(素人)の違いについてあいまいな表現になっています。

プロと素人との違いは仕上がりではありません。
不器用なプロは器用な素人に負けることもあると思います。

本来プロと素人の違いは建築物に必要な性能を間違いなく追加することにあり、そのためにはプロは建築物に関わる性能や法律などを理解している必要があります。

例えばガスの知識がない方がガス工事を行うと、ガス漏れを起こす可能性が高くなります。
また、電気の知識のない方が電気工事を行うと漏電による火災などを起こすリスクも高くなります。

建築資格は住宅の大工工事において、プロと素人との差と言ってもいい資格です。

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建築資格を持つメリット

お客さんからの質問の意味に正確に答える

・大工仕事が楽しくなる

建築の全体像を把握する

勉強はナゼ必要なのでしょうか?

ヨビノリたくみ先生が「勉強とは人生を豊かにすること」と言っていました。
例えば旅行に行く場合、旅行先の歴史などを勉強してから行くだけで観光地として案内されるより楽しく観光できるということです。

建築資格で学ぶ知識は全て大工が絡む知識ですので、知れば知るほど日々の工事が楽しくなります。

商品の意味や仕様を知る

近年の建材は様々なものがありますが、施工者が把握している必要があります。

例えばダイライトと呼ばれる商品と構造用合板は値段や性能が違います。
お客さんが性能を住宅に追加するために高いお金を払っているのですが、違いが判らないままに施工していませんか?
建築資格を学ぶことで一つ一つの商品の性能について理解することができます。

構造用面材の性能については断熱材の記事で解説しています。

・棟梁としてのメリット

設計に意見を言える

建築士を持つと、他の建築士が設計した設計図面でも自身の責任で書き換えることができます。
建築士と建築士を持つ大工では木造住宅に関する知識は多くなり、大工の方がお客さんの暮らしや財産に有益な情報を与えることができます。

大工がお客さんから信頼を得ることができると、工事を大工主導で行えるようになり現場が円滑に進みます。

業者さんを知って協力し合う

建築資格では大工以外の建築の知識を勉強します。
現場を統括する棟梁が外壁の防水や設備など各業者さんの目的や規定を理解できることで大工が業者さんに協力できることも増え、業者さんが大工のために行ってくれることも増えます。

現場内の協力体制ができることで工事を円滑に進めることができます。

不動産屋さんに助言

大工工事では不動産屋さんの下請け工事を行うことも多くなります。

不動産屋さんは建築物を売る(紹介)する商売にもかかわらず建築知識がありませんので、不動産屋さんのトラブルの多くが建築知識の少なさが原因になります。

建築知識を持った大工であれば不動産屋さんに助言することで、トラブルを未然に防ぐことができる可能性もあります。

元請けに対してメリットのある情報を持つことは、営業や値段交渉にも役に立ちます。

お客さんから信頼を得やすい

大工はお客さんに「これはできますか?」とよく聞かれます。
このような質問には「技術的、強度的、性能的、法的、予算的に不都合はないか?」という意味になります。

例えば構造梁の下端を欠き取ることは技術的には簡単なことですが、材料強度が著しく低下するような加工ではその旨を説明する必要があります。

他にも連棟の建築物(マンション)であれば、共有する建築物構造部への加工は他の区分所有者から共有物の価値(強度)低下に対して損害賠償請求される可能性もあり、その旨を伝える必要があります。

建築知識を持っていることで、お客さんからの質問に正確に答えることができると信頼関係も築きやすくなります。

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取得していないことでのデメリット

・資格者にとって建築知識は常識

建築現場には建築知識を持った人がたくさんいます。
建築士は建築関係の学校を出た時点で取得できますので、若くして建築士を持った人にとって建築知識は常識です。
建築知識を持った人がたくさんいる環境で建築士を持っていないと同じレベルの会話ができなくなります。

建築知識のない大工さんには作業しか任されなくなります。

・技術と同等に比較される知識

腕を認められた大工さんの中には勉強を軽視する方がいます。
技術も大事な評価対象ですが知識も大きな評価対象になります。

お客さん立場で考えると、勉強をする努力をしなかった大工さんに自分の家を任せたいと思うでしょうか?

建築資格を持つ大工は、お客さんのために勉強する一生懸命な姿勢も評価されます。

ネットによって差が出やすくなるこれからの時代には、技術と共に大きな選択要素になります。

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知識と常識の関係

建築資格の勉強は社会の仕組み(一定の常識)を学ぶこともできます。
大工は無資格で仕事ができる珍しい仕事ですが、無資格の大工さんの中には非常識な方も多くみられます。

例えば、工事現場でお客さんの子供さんの名前を見つけて大きな声で「変わった名前やなぁ」といった腕のいい大工さんがいました。
このような大工さんはいくら腕が良くても今の時代に必要とされません。

建築資格を持ったからと言って常識人になるとは限りませんが、建築資格が不要だと考える時点で常識が欠けている大工だと言えるのではないでしょうか。

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最後に

作成者は大工に資格がいらないと言われていることに疑問を持っています。

お客さんは作業員としての大工は求めていません。
お客さんの家計の事情を知ってプライベート空間に踏み込む仕事である大工には絶対的な信頼が必要です。

大工さんであれば取れないことはない難易度の資格なので、これから大工を目指す方はぜひ取得いただきたいと思います。

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