大工の収入【プロが解説】サラリーマンとの比較
今回は大工を目指す方向けに大工の給料事情についてプロの大工が解説します。
結論から言いますと現在の大工職人の収入はサラリーマンの給料には遠く及びません。
いきなりやる気を削ぐようで申し訳ありませんが、決して今回の記事でお伝えしたいことは「儲からないからなるな」と言いたいわけではなく
「これからの大工は儲かる可能性がある」ということです。
給料事情を把握して、一層「大工になりたい」と感じていただけたらと思います。
目次
大工手間は高いのか?
・建築業の値段について
・職人とサラリーマンの生涯所得の比較
・サラリーマン所得から計算する職人の日当
職人以外の大工の給料
・建設業でのトラブルの解決
・大工の育成
大工は簡単に起業できる
・個人事業主
・業者の手配
これからの大工の価値
・大工の希少価値
・値段と満足について
大工手間は高いのか?
職人は一般的に一日の日当で給料を計算されています。
大工職人の日当の金額について解説します。
・建築業の値段について
建設業は他の業種と比べて値段のつけ方に特殊な部分があります。
見積りを見た時のお客さんの感覚
工事見積りには「大工手間」という項目が記される場合があります。
例えば大工手間5万円と記されており、実際の工事の際に大工が半日で工事を完了したらどう思いますか?
「大工さんは半日で5万円もらうのかな?」
と思いますよね。
実際にはほとんどが経費(会社の運営費)なのですが、わかりにくい項目は嫌がられる傾向にあります。
お客さんが計算してしまう環境になりやすい建設業では職人の給料は安く見積もらざるを得なくなり、利益率の低い職人の給料は上がりにくくなります。
・職人とサラリーマンの生涯所得の比較
サラリーマンの日給
サラリーマンの日給がいくらになるか知っていますか?
サラリーマンの平均生涯所得から日当を計算してみましょう。
1億5000万円を35年の12か月、週休2日で割ると一日約18,000円になります。
2億円の場合は一日約24,000円です。
大工の経費
大工が工事するためには経費が必要になります。
車の維持費や移動費、通信費、道具の購入修理代、金物や接待交際費(コーヒー代など)
手間請け職人の場合で年間に250万円ほど必要になり、週休1日で計算すると一日の経費は約8000円になります。
ケガのリスク
大工は建前などの高所作業や、大ケガリスクの高い加工機を使用する作業を行います。
「死ぬ可能性のある仕事をいくら貰ったらやるか?」と考えたことがあるでしょうか?
例えば無料見積もりとして行う屋根に上がっての雨漏りチェックは、実際にたくさんの方が亡くなっている危険な作業です。
・サラリーマン所得から計算する職人の日当
前記したサラリーマンの生涯所得から計算したサラリーマンの実質の日当に経費や危険手当を足すと職人の本来貰うべき日当を計算してみましょう。
日当18,000円として経費8,000円を足して危険手当平均5,000円(作業によって危険度が変わる)とすると31,000円になります。
現在の建築業界では大工に支払われる日当は平均20,000円~16,000円程と言われていますので職人の給料はサラリーマンとは比べ物になりません。
職人以外の大工の給料
ここまで大工職人が稼げないというお話をしてきましたが、ここからは大工の本来の給料事情についてお話しします。
建設業はたくさんのニーズがあり、大工知識は様々な仕事に役立てることができます。
・建設業でのトラブルの解決
建設業では頻繁にお客さんと会社の間でトラブルが発生します。
トラブル原因の多くが説明不足(知識不足)です。
建築は予算や将来計画、法律や近隣のトラブルなどたくさんのことに関わりますが、最も修得しにくい専門知識が大工知識です。
建設業を行う上でトラブルを減らすためには、大工知識を持った人材が必要不可欠になります。
・大工の育成
現在大工は激減していますので、若くて仕事のできる大工は「金の卵」です。
建築会社や不動産会社は大工がいないと、工事を受注ができても施工ができず集金もできません。
大工は一日に一人分しか工事を進めることができない職業なので、現在デキル大工を会社同士で取り合ってる状況です。
自社で大工を育成するためにもできる大工が必要です。
大工は簡単に起業できる
・個人事業主
大工は起業しやすい職業です。
というよりも大工は一人前になった時点でほとんどが「一人親方」という個人事業主になります。
一人前の大工になった時点で下請けを行うか一般のお客さんからの依頼を受けるかを問わず、会社を起こして社長になっている状態です。
また、図面の作成や見積りは実務の中で修得できるスキルです。
・業者の手配
建築業を行う上で大事なことの一つに協力業者さんを見つける必要があります。
少なくとも大工は確保できるため(自分)、他に電気屋さんや水道屋さん、内装屋さんなどに依頼できる環境を作ります。
ここでも大工の実務経験があれば他業種の知識や繋がりから集めることが可能です。
施工力の重要性について
ここまで大工の施工力について触れてきませんでしたが、施工力は最も重要なスキルになりますので、最低限プロに認められる職人レベルにはなる必要があります。
現実に施工力の低い大工もいます。
施工力の無い大工さんは工事を行うたびにクレームを出し続けます。
大工は長年住み続ける住宅の施工責任を負いますので、一度クレームを出すと作り直さない限り永遠に呼び出しが続きます。
心を病んで逃げだした無責任な大工を何人か見ました。
これからの大工の価値
・大工の希少価値
全ての職業に当てはまることですが、ニーズがある希少な存在は希少価値が上がります。
当然大工も希少価値が上がります。
・値段と満足について
希少価値が高いから値段が上がるとは限りません。
お客さんに値段と満足が釣り合っていると感じてもらわなければいけません。
値段(大工単価)を上げると同時にサービスの質も向上させ、質の悪い工事との差別化を明確に示していく必要があります。
見習い期間の給料問題
大工の減少の原因の一つに見習い時の給料の低さが挙げられますが、これは鳶職や解体業などの職業と比べた場合の話です。
大工は医者を目指す程に難しい職業です。
医者になるには医大に入り研修医を経験する必要がありますよね。
大工は一般的にフリーランス職(作った分のお金をもらう)なので、給料という概念がありません。
弟子入りで給料が発生するわけもないのですが、親方はいくらかのお金をくれることがほとんどです。
これは給料ではなく道具を購入するためのお金です。
道具を持っていないと独り立ちできない特殊な職業下での親方の親心ですので、ここが理解できないと大工になることは難しいかもしれません。
最後に
いかがでしたでしょうか?
現在の大工職人の給料はお世辞にも高いとは言えませんが、将来的に単価の上昇は予想されています。
若いうちに修行を終えれば若いうちに職人として稼げるようになります。
比較的自由の利く職業なので資格取得などの時間をとることもでき、広いニーズのある建築業だからこそ転職にも有利です。
起業して大きな会社を作ることも不可能ではありませんので、ぜひ大工を目指してほしいと思います。